#10
「あの黄泉が日本に来てた!?」
「奴って確かメジャーにしか興味なかったじゃん!」
JSメンバーだった琴美と恵子は返ってきたとから
の報告に大声を出して驚きを露にした。
「…もしかして、まだに未練があるのか?」
「忍正解だな。雉子村の奴会った途端に
抱きついてきやがったよ」
畳に敷いた布団の上で胡坐をかき、足の上に肘を置きながら
は憎々しげにそう言い放った。
「私が3年だったからもう2年くらい前ね。あの時から速球凄かった
けど、もう100マイル到達してるなんて…」
恵子は心から感心し、琴美も忍も当時を思い返してしまった。
「が初球から当てちゃったのが印象強かったんでしょうね。
帰る日まで何度も挑戦してきたし」
アメリカで開催されたジュニアソフトボール世界大会。
遠征現地で知り合った日系人が黄泉だった。
日系人でなく日本人だと知ったのは今日のことだ。
「あの速球に慣れたがいたからこそあの大会で
優勝できたとも言えなくもないが…」
そう言い合っていると由乃と瞳がコソコソ話し合って
から手を上げた。
「質問やけど、そのはどこ行ったん?」
「さっきから姿みえんよ」
ああ、とは頷いて窓から見える本館を指した。
「燐と香苗に会いに行った」
「…喧嘩なるんとちゃう?」
「なるだろうね。香苗はともかくとして燐が凄い剣幕になる」
でも、アタシが手出しする訳にはいかない。
たとえ、切欠はアタシでも…。
どうしてあの子ばかり辛い思いをするのだろう。
強烈な個性を放つのなら、アタシ等だって劣りはしない。
実力は確かに一線を画してるけど、それを驕ってる訳じゃない。
それなのに……。
「県選抜の開会式まで残り10日間」
比嘉がケータイのカレンダーを見た。
抽選会と開会式の日にはマークがしてあるからすぐに分かる。
「が立ち直らない限り、上るのは困難を極めるでしょうね」
琴美はトランプをひいて持ち札に加えた。
ポーカーゲーム中らしく、恵子も2枚捨てて山札から捨てた数
だけカードを引いた。
「外敵はそこら中に徘徊してるし、今のところ平気だって確信できる
のは東京・神奈川・北海道・沖縄・広島・和歌山・新潟・京都」
「それと埼玉で9チーム。ドロー」
手札と睨めっこして刀祢が手札を公開した。
「ストレート」「2ペア」「フラッシュ」「フルハウス」
「忍の勝利。つまり、うちらの出身地しかないってこと」
白い布団に赤と黒のカードが散らばった。
「は、この女子選抜のジョーカーだ」
忍は自分の手札にあったジョーカーだけを手に持った。
道化師の格好をして口元はルージュで目先まで広がっているジョーカー。
最強のカードにして、最凶のカード。
「違うのは、ポーカーはジョーカーがなくてもできるが、
こっちのゲームはがいなくては成り立たないことだな」
中学でのソフトで頂点まで上り詰めた実績。
突然姿を消した話題性。
野球部に入部してメディアの目の前で知らしめた実力。
これは人を球場へと惹き付ける強力な餌。
その餌を利用するために女子を受け入れた高野連。
つまり、の存在がなければこの大会自体が存在しなかった。
「だからアンタは黒蝶なんだよ、」
すべてを飲み込む漆黒の翅でどこまで飛んでいく?
どこまでその存在は他人の感情を奮い立たせる?
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