#05
「あ、それと一応チームメイト紹介しておくね」
場の雰囲気を変えようとはチームメイトへと近寄った。
「今女子選抜の席争ってる人が全員で45名。
その中で5チームに分けてリーグ戦中。
私が所属してるのはチーム名"零"」
恵子、とは名前を呼び、それの意味するところを察知して
恵子は自分の顔が見える位置まで前に進んだ。
「高2で1番ファースト小沢恵子。とはJS時代からの仲間。
今回の大会はソフト部も可だから参加させてもらった」
肩まで伸びるこげ茶色の髪。細めの切れ目は静かな湖を連想させる。
刀祢さん、と恵子は肩に寄りかかってうたた寝する桃色の軽い
ショートの髪の少女を起こした。
「高2、2番サード刀祢せあら、北海道の高校で野球部してる」
眠たげの目が黒撰メンバーは仲間の烏兎と親戚ではないかと
疑ってしまう。
「2年の3番セカンド真寺由乃どす。京都の女子野球チーム所属して
はります。七橋の皆はんは日会がお世話になっとります」
「あら?貴女古家の知り合いなの?」
紅印がちょっと驚きながら聞き返した。
「幼馴染どす」
成程と納得いったところでの隣にいるが紹介を進めていく。
「十二支は知ってるけど1年5番キャッチャー加西。東京の
社会人女子野球チーム通ってたらなんとかギリギリ参加可能だった」
「3年6番ショートの松林瞳。広島商業野球部。
屑桐無涯!カープはアンタを待っとる!!」
茶髪でツインテールの松林はビシッと屑桐を指し示して
そう宣言した。
「松林さんのお父さんが広島の選手スカウトしているそうです」
「考えておく」
「2年の7番レフト、京極忍だ。明嬢で野球部のコーチをしていた」
「あれってシノブだよな」「人気モデルが何でこんな所いられるんだよ」
「事務所に辞職届提出済みだ」
「うそ!?それ私も知らないよ!」
は思わぬ宣言に忍を顧みると、忍は流し目ぎみに目をふせた。
「モデル業よりもこちらの方が遣り甲斐がある。
どうせ奨学金と小遣い目当ての仕事だったしな」
「ああ、そうですか」
真剣にモデルしてる人が聞いたら刃物を持ち出されそうな気がするよ。
「2年、8番ピッチャー切原琴美よ。神奈川の女子野球部所属。
JSもしてたから知ってる人はいるかもね」
「3年で9番ライト、沖縄の比嘉智美。このチームで主将してるぜ」
「で、4番センターが私です」
※守備範囲が広いことを買われ、監督命令により
ショートからセンターへコンバート。
自己紹介の中、朱牡丹が後輩の御柳が唸っているのに気づいた。
「ミヤどうした気(?0?)」
「なーんかあのでっけー女に見覚えが……加西、ん?加西!?」
「やっと思い出したかバカ」
けけけとが悪巧みの成功した時の笑い声をあげて
御柳はバカの言葉に怒っている。
「だから"ラ"をつけろって何回も言ってんじゃねえか!!
つーか、テメエ女だったのか!?今初めて知ったぞ!!」
「、ミヤ君と知り合いだったの?」
は驚いた様子でを見上げた。
「昔の喧嘩相手だよ。同い年でアタシにつっかかってくる
命知らずは珍しかったからね」
「、本当にコイツが相棒でいいのか!?コイツの親父は
日本有数のヤクザの大親分だぞ!!」
御柳はとの目の前まで来ての肩を掴ん説得にあたる
御柳にはさらりとこう言い放った。
「知ってる」
「は親父のチョーお気に入り。それにウチの直下は
クスリと売春なんて下のやることやってねーから平気だって」
の交友関係の広さここに極まれり。
ひとまず皆への挨拶はすませたと見切りをつけては
埼玉選抜監督である白雪に体を動かした。
「お久しぶりですね雪さん。女子選抜候補として挨拶申し上げます」
「去年の夏以来かな。こちらこそよろしくお願いします」
互いに腰を折って会釈し、同時に顔を上げてくすりと笑った。
「お互いこうなるなんて思わなかったね」
白雪はの髪を手で梳いてそう囁いた。
はそれがくすぐったくても、拒もうとはしない。
「そうですね。でも、私は機会を掴めたんですからラッキーですよ」
「ちゃんが頑張った結果だよ。でもこれからがまた大変だ。
無理するなって言いたくても無理しないと前に進めない道だからね」
「無理する価値のあることだから、それでいいです」
「君らしい返答だ」
パイポをくわえ直して白雪は苦笑した。
「それに話通りだね」
白雪は後ろで自分を睨んでくるの義理の兄達を見てそう言った。
「白雪監督とも知り合いだったのか?」
魁の当然の質問には面白いものを見ている表情で白雪が答えた。
「ちゃんは僕と師を共にする仲だよ。妹弟子ってところかな」
「師匠殿に以外の弟子……言われてみると雪さんとは
聞き覚えがあるような…」
「俺ずっと女の人だって思ってた」
魁は記憶をたどりながら手にあごを預け、由太郎はああ、と
思い出したが、自分の勘違いに少し恥ずかしくなった。
ぴくりと眉をひそませ、白雪はへ返答を求めた。
「ちゃん、お義兄さんたちにどんな風に僕を話していたんだい?」
は人差し指を額に当てて考える素振りをみせる。
「青みがかった白髪が綺麗でわびさびと柔麺を愛する人」
「勘違いして当たり前だと思うわ」
琴美と一言にグラウンドにいる全員が賛同した。
間違ってはいないけれど、性別はまったく分からない説明である。
「っていうか、そろそろ戻らないとその師匠が怒る気がする」
せあらの気だるげな呟きにチーム“零”に動揺が走った。
「雪さん今何時!?」
電光が走ったようには焦り始め、腕時計をしているはずの
白雪に時間を聞き出した。
「ん〜4時ちょっとすぎってとこだね」
「やばっ約束の時間過ぎてるんじゃない!?」
「確か4時半には戻るって行ってたし」
「戻るよ!」
「はい!では皆さん練習頑張ってください!!」
はチームメイトに急かされて口早にお別れ言って道路を猛
ダッシュして壁の裏へと消えていった。
「……そんなにその師匠って怖いング?」
「さあ?でもかなり焦ってた気だよね」
「うちの師匠は、まあ自他共に厳しい人だから」
ふいっと目線をそらした白雪の目は虚空を眺めているような哀愁漂う
もので、埼玉選抜にはそのまだ見ぬ師匠に恐怖を植えつけた。
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