#01









突然の監督の指示にわだかまりを感じながら十二支
レギュラーは閉会式の列に並んだ。

例年では全校参加は強制しなかった閉会式にどうして
自分たちは出席しなくてはならないのか。

華武の持ち帰る雄々しい優勝旗を恨めしそうに眺めた。


「何でわざわざこんな嫌味なもん見なくちゃなんねーんだよ」


憎憎しげにそう愚痴をもらす猿野に虎鉄がゴツンと
肘つきを頭に軽く当てただけだった。

全員に覇気がなかった。

負けたことも原因だが、やはり、がいないことが大きい。

あの存在がいないことがこんなにも不安になる。

が部活にこない日はそれ相応の理由があったし、
事前に教えてもらっていたから余計におかしいと感じてしまっている。


『皆さん本当に長い予選日程を頑張ってきましたね。
私からの話は以上ですが、今回は全国高校野球連盟
理事長より直々にお話があります』


県理事の挨拶が終わると、次に挨拶するという人の
肩書きに目を見開くものが多くいた。


「どうやら間に合ったようじゃの」


そして、出入り口から野球ボールの縫い目にみたてた頭をした
巨体の人物がやってきて、県理事からマイクをもぎとった。


「わしが全国高校野球連盟理事長、
球頭神八郎じゃい!!!!」


とてつもない声の大きさに耳を塞ぐ。

そんな大声ならマイクは必要ないではないか。


「ウッホン…わしが高校球界を取り仕切る理事長じゃ。
首領と呼ぶがよい。今日ここにきたのはある提案を
諸君に直に話しておく為じゃ」


しんと静まり返った会場で、球頭はそのまま話を続ける。


「埼玉の場合は今回華武高校が代表に選ばれたが、このように
高校数が県下で100未満だろうと150以上の激戦区だろうと
ただ1校のみの代表を決めるのが現在のシステムじゃ。

甲子園は県対抗トーナメントというよりは
ココの学校の強さを争うんじゃな。

激戦区であればあるほど代表校以外の選手は
どれ程個人が優秀でも埋もれてしまう」


団体競技故に生じるその弊害。

これを解決する方法は未だかつて実行されたことはない。


しかし、もし各校という枠組みを外して各都道府県で
精鋭の猛者でチームを作った場合、甲子園とはまた違った
結果が出るのではないか
とわしは以前から考えていた。

即ちわしが知りたいのは

真に全国で最も強い都道府県は
どこなのかという事じゃ!!!」


会場に集まる高校球児はまだ何がしたいのかはっきり
内容をつかめていなかった。

球頭は深呼吸をして、次の瞬間今まで以上の音量で
その事を宣言した。


「これより第1回全国高校野球県対抗
総力戦の開始を宣言する!!!」


バリーンッ

球頭の握っていたマイクは粉々に破壊される。

いや、それ以上に彼らの心を震え立たせたのは
全国クラスでの新しい活躍の場の誕生だった。


「この全都道府県+1チームを加えた全48チームでのトーナメント戦。
大会開催は本大会終了後、同甲子園球場を使用予定じゃ」

「もう1チーム?」「都道府県での対決に何で…」


疑問の残る説明に何人かが近隣の者たちと言い合った。


「今年になってその優秀な個人がまた範囲を広げたからじゃ」


ピクリといち早くその個人に気づいた者が身じろいだ。

「それはすなわち女子選手。

この地区の者であれば誰しも1度は耳にしたであろう。

十二支高校の

別名黒蝶の出現はわしらの価値観を多いに揺るがすものだった」


気づいた者はやはりと納得し、気づかなかった者は
驚きに目を広げている。


「今までは女子と男子の体力格差で出場を拒否し続けた。

差別でなく区別だと言い張った。

だがしかし、本当にそうなのか?


球頭の投げかけに、明確な答えを今出せるのか?


「黒蝶だけでなく公式試合に出場できないにも関わらず
練習に励む女子高生は全国に散らばっておる。

その者達の実力も測らんで何故出場資格を認めないのか。

その答えをここで出そうではないか!!

高野連はこの大会で女子選抜という枠組みでのみ女子の出場を
許可した。今現在大会を開き、チームを選抜中じゃ」




「そっか、だからの野球道具とか全部なくなってなんだな」


由太郎がぽんと手を叩いて合点がいったと首を頷かせた。


「しかし、まさかこの様な事になるとは…高野連も
粋なことをなさってくれる」


村中兄弟は間違いなくが加わる事を確信していた。

否、全員がこの後黒蝶と呼ばれた存在と戦うと予期した。


「成程、それ故殿は姿を消したのか」

「そうだね蛇神君、次は彼女自身が戦う。楽しみだ」


ざわめきだつ会場に予想通りだと球頭はにやりと笑った。


「ひとまず今から名前を呼ばれる者が基本の選抜メンバーじゃ。

そのメンバーでキャンプを行う。呼ばれた者は今後の指示に
従い華武と共にバスで現地に向かってくれ」


懐から巻物を取り出して、そこに書かれた名前を読み上げていく。






「ついにやりやがったなあの我侭娘」

「ここぞと決めたもんには一歩も譲らんのがうちの義娘だ。
しかし、まさか今年中だとは考えもしなかったがな」


羊谷と紀洋は予想だもしないこの事態にも
さほど慌てることはなかった。

元々女子選手を認めるようにの根回しは怠らなかったし、
それが叶うだけの証拠と賛同は得てきたのだから。





さあ、新しい時代の幕は上がった。


甲子園という舞台を盛り上げる役者はどのような
喜びと興奮を観客に与えるのか。


いまここでそれを知ることはできない。

















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