#34
そして次の日、十二支高校グラウンドでは野球部の
引退式が行われていた。
「っ何ではこんな日まで出て来ないんだよ!!」
もみじは落ち着かない様子で足踏みをする。
「家に電話しても用事があって今は家にいないっていうし」
「こんな大事な日までこないなんて何かあったんじゃ…」
周りが心配そうな意見を出す中。
「は大丈夫かも……」
檜は猫神さまを抱えなおしてタロットカードを1枚引いた。
その絵柄を見て兎丸があっと声を出した。
「それって、あの時のちゃんに出てきた」
「(審判のカード…だったよね)」
1年には見覚えのある天使が笛を吹く札、審判。
「そう、が野球に戻る前に出てきたカード。
でも、これはあの時の状況だけを占ったんじゃなくて、
の今後を占ったの」
すっと審判のカードで檜は口元を隠した。
その時、風が吹いて、檜のやわらかな髪を揺らした。
「キーワードは決定、判決、再び、新世代、回復」
流れるように言の葉が風に乗って、そこにいる全員の耳に入る。
それはまるで、厳かな神託を聞いているように。
「まだこのカードはの今後を導いている」
檜の神秘性のあるその言葉は誰も口を挟めない。
「ちゃんは……」
ここで目元を赤く腫らした凪が口を開いた。
「ちゃんは、私に行ってきますって言いました。
だから、何か"決定"したんだと思います」
凪は最後ににあった人間。
剣菱の病院に出てから彼女は消えたのだから。
『凪、私が憎くないの?』
苦しそうに胸を押さえる姿は、いつもの強いでなく、
屋上の時のだった。
『私は、ちゃんに嫉妬したことはあっても、
憎んだことは一回もありません。
だって、ちゃんはお兄ちゃんと私を想って、
こんなに悔やんでくれているんです。
憎むことも、嫌いになることも出来ませんよ』
答えを聞いた後、はありがとうとごめんなさいを
何回も繰り返していた。
そして、剣菱と東蘭風の容態は命に別状はないと
医者から聞くと、鳥居夫婦と東蘭風監督の息子夫婦に
挨拶して、病院を後にした。
その時は、泣いた跡の残る顔をかくさずに、背筋を張って、
前をまっすぐに見て歩いていた。
凪に、行ってきますと言ってから。
「だから、ちゃんのしたい事をさせてあげたいです」
自分の咎でない罪を抱え、自分の罪も抱え、
それでもしたい事を見つけたなら、邪魔したくない。
凪は本気でそう思っていた。
誰も、何も言えない空間が漂う中。
「おーい!引退式中止だ!!全員大宮球場に向かえ!!」
羊谷の一喝がグラウンドに響いた。
時の流れは止めることはできない。
それは人の歩みも同じこと……。
がこの十二支に通い始めたときに満開だった桜は
緑一色の若葉に彩られている。
END
あとがき