#28
「どうすんだ逆転されちまったぜ!!」
「あの鳥居の球打たねーと取り返せねえじゃねえか…」
十二支スタンドの1年軍が心配そうな声を口々に上げた。
そして、声には出さずともベンチの選手達も
身をもってそれを痛感している。
「…オイオイ!シケた面してる場合か!?」
ここで、猿野が活を入れるように怒鳴り声を上げる。
「この程度のピンチ今までだてチョチョイのチョイで突破
してきただろ!!
俺達の目標はコイツに書いてある通り甲子園だろ!?
だったらこんなところで落ち込んでらんねーだろ!!」
バアンッと貼り付けた旗を猿野は大きく叩く。
「あーあ、台詞とられちゃった。お猿君の言うとおり、
まだ挽回のチャンスが消えたわけじゃありません!!」
は自分を奮い立たせるように立ち上がった。
「まず、天竜はこの先は使用を止めておきます。
剣菱さん以外にも影で打てる人がいる事が
判明しましたしね。
犬君、辰君。蛟竜と飛竜、チェンジアップで
対応どこまでできると思う?」
「鳥居氏と古家氏以外であればなんとか・・・」
辰羅川の返答には自分の書いたノートを広げた。
「剣菱さんと古家さんには出来るだけ先頭打者になって
もらいましょう。
幸い、先ほどの回は兜鍬さんファースト前でアウトに
できましたし」
それに、そろそろ剣菱さんも疲れが見えるはず…。
4回裏、十二支の攻撃は剣菱の投げる球の重さの
打開策敵わず3者で終了。
5回表セブンブリッジの攻撃。
「雀さんワンタンさんはチェンジアップで三振、
あの手の打法は一度リズムを崩せばなんとかなる」
3番紅印が打席に入った。
1投目は空振り、2投目は。
ギキィン
「ファール!」
「紅印さんのが一番厄介。だから、打たせて捕る」
3投目、犬飼が投げたのは蛟竜のはずだが。
え?!
ギイィィン
「上がりが低い!お猿君!!」
「おう!」
バチッ
の掛け声で猿野がバウンドなしでキャッチ。
「アウト!スリーアウトチェンジ!!」
「あれ?今の蛟竜前と反対に曲がったヨ?」
ワンタンが不思議そうにそう口にした。
「カットファストボールは本来スライダー、シュートの2方向ある。
さっきのはシュートの方で、アメリカではリカットボール
って呼ばれる場合が多いね」
シュートは投手の利き腕の方向に曲がり、スライダーは
普通、反対の方向に曲がる。
犬飼が今まで使用していた蛟竜はスライダーの
方向のみだった。
結構前から気にはなってたんだけどさ。
辰君の持ってるノートに書いてなかったのかな?
すでに監督からの采配権をぶんどっているとは
気づいていない。
このまま局面は膠着して、回は着々と消化されていく。
8回裏。
ドパアァン
「スリーストライク!チェンジ!!」
辰羅川も三振でこの回を終えた。
マウンドでは投げた体勢のまま、荒く息をする剣菱が。
紅印はキャッチャーマスクをとって剣菱に近寄った。
「お疲れ剣ちゃん…」
紅印は話しかけたのだが、剣菱はそれを無視してベンチと
廊下を繋ぐドアに駆けていった。
バタン
紅印と影州の双子が目配せし、同時に合図した。
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