#10









「うっし、獅子川先輩もナイスプレー!作戦成功!!」



あそこの場面で長打を出す可能性はかなり低かった。


だから全員前に詰めちゃった方が効率が良い。

…てかお猿君の守備の穴を逆手に取っただけだけどさ。

セブンブリッジは2回もウチの試合見てるから
守備の穴は丸わかりだし…。



「すげーなあいつらやったぜー!」

「うむ…まさしく全員が信頼し合っていないと
叶わぬシフトだな」


魁と由太郎も感心するチームプレーで第一の危機を乗り切り、
お次の打者を出迎える。



『十二支初回のピンチを変則守備で乗り切りました。
次は4番ファースト鳥居君』


ピンチを乗り切った?いいえ、まだピンチは続いてる。

「さすがは凪とちゃんの決めた高校だ。
相手にとって不足なしだよ」


ごめんなさい。高校決めた理由で野球部は
結構どうでもいい扱いしてました。



「さーてここはどうやって押さえますかね」


「そうだな、性急かもしれんが鳥居剣菱相手になら
あれを今使っても惜しくはないだろう」


監督の言い分は十二分に頷けるものだった。

剣菱さんはこの大会だけで11本のホームランを打っている。

ここで打たれたら2点で、あの守備からこの点数を
もぎ取るのは至難の技と言える。


「っ!?さん打席を!」


子津の焦った声を聞いて顔を上に上げると、
バットをまっすぐ少し上位に上げていた。

「へぇ、ホームラン予告。やってくれるわね」


なんかお猿君あたりが顔引きつってる割に嬉しそうだし。


「悪いけど俺は全打席ホームランを狙いにいくよ。

あ、そうそう。お〜いてんごく君一つ質問いいかな〜?

君はさ〜バッティングの時いつもどう心がけているのかな?」


突然な質問に猿野は握り拳を前に押し出して答えを出す。


「そら決まってんでしょ。いつでも全力!
いつでもフルスイングっすよ〜!!」


剣菱はその答えに納得いった顔で頷き返す。


「君らしい答えだ。俺もそーゆーの好きだよ。野球では
"ボールをよく見て打つ"事も"コースに逆らわずに打つ"
事も"チームで繋ぐバッティング"も勿論みーんな大事さ」


でもね、と剣菱は反意語を用いてきた。


「それって及第点であっても完璧ではないからね。俺はそれ
だけじゃ満足できないんだ。常に誰にも追いつかない文句
なしの攻撃…ホームランに勝るバッティングなんてない。

俺はね、全打席ホームランを打ちたいんだよ」


いつも眠そうな目が真摯なそれに変化し、力強く
バットのグリップを握ってマウンドを見つめた。

私にはこの言葉がお猿君だけでなく、投手である
犬君への宣戦布告にも聞こえた。


「もう、お兄ちゃんたら…」

「凪、でも私は剣菱さん気持ちは良く分かるんだよね」


ソフトでも野球でも高く、遠くに伸びる球を追うように
眺めるのが大好きで、それが自分で飛ばしたものなら最高だ。


「それに、全打席ホームランがどれだけ難しいのかは、
野球した事のある人間なら誰でも知ってるよ」


だからこその大きな目標とも言えるけど。

自信持って言えるけど間違いなくユタはこれに共感するね。

その頃スタンドにて。


「うっは〜アイツ気が合いそーじゃん!」


大当たりでピタリ賞。


「そういえばはやったよな全打席ホームラン

「ソフトで、しかもコールドゲームだったがな。それでも
飛距離がもっと欲しいと駄々をこねていたが」


人間誰しも無い物ねだりするのが性である。























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