#8
「身軽ね。まるで糸に引っ張られるようにさっと
虎鉄先輩を飛び越えちゃった」
「それよりも一発で飛竜を見破られちゃったっすよ!?」
子津の心配はもっともだと思う。
は苦々しく思いながら言葉を紡ぐ。
「そうね、それも問題だよ。黒撰はあれでユタまで
は持たせられたのに…」
流石は埼玉二強の一番打者。
「雀さんを塁に出したのは痛いわ。あの身軽かつ
素早い足を止めるのはとても困難だもの」
しかも剣菱さんまで回るの決定しちゃったし。
『さあ続くバッターは2番ショート王君』
ワンタンが前に進み出てバットを目線と水平に
なるように構える。
「あの人も変わった構えをしていますね」
「うん。あれは意図が私にもわからないもん」
凪とがそんな会話をしていると犬飼が一投目を投げ、
それは霧咲と同じく飛竜。
これが止まって見える超速球カ!ココはあれでいくヨ。
中華球雀 攻撃の局"国士無双"
「哈!!!」
気合いの入った呼吸と共に球はバットのヘッドにヒット!
『う、打った〜!?いやこれは突いた〜!!!
打球はショートほぼ真っ正面だ〜!!』
あれ?司馬君が動かない!?
司馬が微動だにしないまま球は司馬の横を掠めていった。
「司馬君!?」
兎丸が驚きのあまり声に出して司馬の名を呼んでしまった。
ワンタンは1塁へ霧咲は3塁へと足を進める。
『十二支ナインここはいったんマウンドへ集まります』
アナウンスの言うとおり9人が集まって
兎丸が司馬にどうしたのか聞いた。
「…っえ!それ本当!?」
「おいスバガキ、音符君は何だって?」
猿野が聞くと兎丸は言い難そうにおずおずと口を開いた。
「えっと…何かね司馬君今の打球止まって見えたんだって」
十二支ナインにざわめきが起きた。
「確かに速かったがYo犬飼の球じゃあるまいし…」
虎鉄が言い淀むんでいるとワンタンが話に割り込んできた。
「お前達味方の球も分からないカ?朕の今の打球は
正真正銘そこのピッチャーの球ネ」
ワンタンが人差し指で指し示す方向には犬飼
が憮然としてワンタンを睨んでいた。
「あっ!?何言ってんだこのラーメンボーヤが。
打球がコゲ犬の球だとか意味わかんねっつーの!」
猿野がワンタンへと逆ギレしているとそれを
止めるかのようにの声が聞こえてきた。
「反射」
「…は?反射が今何の関係があんだよ」
猿野が聞きとがめるとは考えるように
顎に手をやりながら自分の考えを言葉にしてみる。
「遠目から見てると確かにあれは飛竜にしか見えないのよ。
で、さっきワンタンさんが球を突いたので光が鏡に反射する
みたいにしたとしたら打球=飛竜でも繋がらなくはないなって事」
「アイヤー流石はアルヨ!一発で見破ったの
が始めてネ!」
ワンタンはベースの上でぴょんぴょん跳ねながら説明する。
「朕の"国士無双"はインパクトの瞬間にバットのヘッド
で垂直角に球を突くとそのまま投球が跳ね返るネ」
"投球反射"それは守備をかき回すには最適のもの。
「中国四千年の歴史ってやつか…」
「中国関連のビックリ全部それでひっくめられる
と思ったら大間違いですからね」
監督の呟きには思わずツッコミを入れる。
それに、夏や殷の時代から野球のような競技があった
とは思えないのだが。
「んで、対策はあれやります?」
「それしかないだろう。行ってこい」
「了解」
はナインに駆け寄って二言三言囁いてすぐさま
ベンチに戻ってきた。
『次は3番キャッチャー中宮紅印君』
バットとお尻をぐるぐる回すのが目に張り付く。
若干審判と辰羅川が避け気味なのは気のせいではないだろう。
「あわわついに本場のオカマが来た〜」
「う〜んやっぱホンマモンの動きは迫力が違うばい。
虎鉄のクネクネなんかより遙かに激しかね」
「猪里ちゃんそこで比べるなYo!」
「梅さん…おれ気分悪くなってきたんすけど…」
沢松が大方の男性諸君が感じている嘔吐感を訴えた。
「見かけで判断したら痛い目をみますわよ(釘)
ああ見えても彼女(違)は埼玉NO2の超重量
クリーンナップを担う男ですわ」
梅星の言うとおりではあるのだが、沢松はやはり
口を押さえたくなる衝動は止まなかった。
NEXT