#2
すっとは人差し指を立てた。
「一点」
たった一つの単語だけでは意味は通じない。
でも意味を深める為にしておきたかった。
「全員で一点奪りにいく野球をしてみましょう」
それしかないと確信するようには笑ってみせ、
野球部員はさらに疑問がふえるばかり。
「。それはどういう事なんだ?」
平泉のもどかしそうな声に具体的な説明を監督が始めた。
「今までは1人1人が対策を編み出し、1発を狙いに
いく力技的結果になっている」
監督の説明には補足を入れた。
「1年が多く、1人1人個性の強い技ばかりなので
今までは力で波にのる方法をとってましたが、
今回の7Bは息の合うプレーが目立つのを見ると、
こちらも力をまとめる必要がでてきました」
本当は黒撰でもそうしたかったんだけど、
時間が足りなかったんだよね。
「この試合は1点の重みに苦しみますよ」
は軽く肩を回してコリをほぐす。
その間にも監督の話は続く。
「こちらが大量得点を望めないと言う事はそれ以上に
相手に点を奪らせてはならんと言うことだ。
そこで鍵を握るのが犬飼と辰羅川。Aバッテリーだ」
白い煙が空中に掻き消え、タバコ特有の匂いが鼻につく。
「犬飼、例の球…しかと見せてもらったぞ」
大神さんが3人に残した4つの球。
不安はある、というか私から言わせればまだまだ
4つともまがい物でしかないけれど、短期間の間で
使い物になった事に驚きだ。
「犬君、いけるよね」
「ああ。奴等がどんなバッティングでこようと
こっちには四大秘球のすべてがそろった」
グッと拳を握り締め、自信に満ちた言い切りに
周りがざわめいた。
「残り2つも使えるようになったのか!?」
「実践で使えるレベルなんだろうな?」
その質問に答えたのは辰羅川。
こちらも自信があるようだ。
「四大秘球に関しては昔から理論とフォーム両面で
すべてを研究したのに加え、ある意味この中で最も
経験と目に肥えているさんのヒントも受けられました。
一時痛めていた腕も随分良くなったのも大きいですね」
は誇らしそうに辰羅川の遠回しな褒め言葉に応える。
「そりゃもう念入りにマッサージも治療もしましたから」
知識は持っていて早々邪魔にならないものなのよ。
膨大な知識を植え込んでくれた師匠よありがとう。
「ただ、蛇神先輩の目の状態は回復が間に合いませんでした」
本当に残念そうには蛇神についての報告をする。
蛇神がいないのは守備でも打撃でも大きな穴になるのは
全員知っているので心配そうな声があちこちから上がった。
「凪、準決勝のベンチはお前の予定だったが、
相手が相手だ…どうする?」
監督が凪に問いかけ、答えを固唾を呑んで返事を待った。
「いえ、ちゃんも同じ状況になってても
頑張ったんです!私にやらせて下さい!!」
「うん。分かった」
は凪の決意を快く受け取った。
「さぁ、明日はいつもより一人一人の1プレイに全体の
流れが左右されます!!気を抜いたらすぐに取り返しが
つかないことを忘れないように!!」
「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」
最後の気合の張った掛け声は十二支全体に響きわたった。
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