#01 野球部勧誘
「眠い〜」
私の隣でだらけているのはこの学校初の友達の。
説明会の時に席が隣同士だった時に知り合った
肩までのセミロングが似合うかわいい系な子だ。
少し人見知りが激しいが、私達は直ぐに仲良くなれたよ。
「まあこの天気じゃしょうがないね」
気温は20度前後、湿度60%前後、天候快晴。
なんとも過ごし易く、昼寝にはもってこいの放課後3時。
只今私は入部したての文芸部の活動に勤しんでおります。
昨日、男が男を背負って全力疾走してる変わった集団見ちゃったりしたけど
それなりに平和で、先輩、同級生共に面白い……もとい、良い人ばかりで
好き勝手にしながら皆と楽しくおしゃべりできるとても最高な時間を
過ごしてとっても大満足中。
開け放たれた窓から心地よい風が入ってくる。
羊のおじちゃんの誘い断って正解だったね。
小さい頃から体を動かしまくっていた私にとって
このインドアな生活は憧れなかったわけではない。
しかし、体を動かすのが嫌いになった訳でもない。
それどころか今でも大好きだ。
親や兄弟と野球をしたりしていたし、中学ではソフトで全国にも世界にも行った。
しかし、ここ1年程は慣れ浸しんだバットもボールもグローブも触っていない。
……触りはしてもゲームをする事はもうないだろう。
約1年前の事件はそれ程私に被害を与えた。体にも、心にも。
「そういやぁ。一昨日さ、羊谷先生に呼ばれてなかった?」
行儀悪く机に突っ伏しているは思い出したように私に声をかけた。
この子はココだとこんなに感情出せるのに、他だと消極的なのかな?
「ああ、野球部マネージャーの勧誘」
「「「「「「「えええぇーーーーー」」」」」」」
急に周りから非難とも驚きとも言える悲鳴が耳を貫いた。
「何で先輩たちまで驚く?!」
「野球部のマネになんの?」
と唐澤先輩。なってたらココにいませんよ。
「今年の1年2人しか入らなかったのに?!」
と石坂部長。部員確保大変だものね。
「(あだ名)が辞めたらつまんなーい」
と外所先輩。少し嬉しいです!!
「マネに誘われるって事はそれなりに運動できるって事だろ?意外だ」
と下重先輩。失礼な。
「「右に同じ」」
と小野関先輩と伊藤先輩。……泣いていいですか。
「ちゃんと断りましたって。ここの部活辞める気
まったくないんで大丈夫ですよー」
「ああ、そりゃ良かった」
部長は安堵のため息を吐く。一件落着に見えたのもつかの間………
『こらー1年E組!!
3分以内にグラウンドに下りて来い!!』
マイクで拡張された怒鳴り声が学校中に響く。
「……あっちは諦めてないようだね」
冷静な判断&ツッコミありがとう下重先輩。
私はベランダに出て、声が聞こえてきたグラウンドの方に向かって叫んだ。
『何て呼び出ししてんですか!!
ちゃんとその話は断りました!!!』
『ウルセー!!後2分以内に来なかったら
“あの事”お前の親父にバラすぞ!!!』
『横暴だーーーーーーー!!!!』
「おいおい、後2分は無理がありすぎだRO」「監督も無茶いうとね」
下に集まっている野球部の方々は呆れ返っている。
全くその通りだ。後2分で3階からグラウンドなんて無理……あっ。
私の横にある大木が目に止まった。幹も枝も太く、丈夫そうだ。
「あれなら耐えられるよな」
この時の私の顔は“悪戯を始めるハ●―ポッ●―のフレッド&ジョージの様だった”
と下重先輩(児童書大好き)が後に語った。
「?」
は恐る恐る私に声をかけた。
あー吃驚させたか、でもコレからが本番なんだ。ゴメンよ。
「、悪い。私の鞄、後で持ってきてね」
「は?」
右良し、左良し、真下良し。体育で使った運動靴に履き替え、
上履きをビニール袋に入れ、手に通す。準備完了。
「じゃっまた後で。行ってきまーす」
そういって私はベランダの手すりを乗り越え落下した。
「「「「「「「「「「「「「何ぃぃぃぃぃーーーーーー」」」」」」」」」」」」
今、何の関係も持たない野球部と文芸部の心が一つになった。
他の部活動をしている生徒には迷惑この上ない。
落下を続けて少し懐かしい無重力をフルに体験しながら
私は大木の枝に掴まり鉄棒よろしく前転回りをした。
「「「「「「「「????!!!!」」」」」」」」
皆がの想像のつかない行動で驚いている時、当の本人は。
スパッツはいておいて良かったなー
とかのんきな事を考えていたりした。
枝のお陰で随分勢いが弱まったのでそのまま手を離して
スタンと3階から落ちてきたとは思えない足音をたてて着地。
「あんなのありかよ」「足、平気なのか?!」
「わー。あのお姉ちゃん凄いね。司馬くん!!」「(コクコク)」
お褒めに預かり光栄ってか?
野球部のざわめきを聞きながらその集団へと近づいていく。
「良し満点。羊のおじちゃん間に合った?」
「『良し』でも『間に合った?』でもないっす!!
何やっているんすかさん!!!危なすぎっすよ!!」
1人の野球部員が猛スピードでこちらに近づいて説教のようなツッコミを開始した。
…子津君だ。
彼は同じクラスで席が近く掃除当番も一緒なので結構仲が良い。
「子津君。こうでもしないと2分じゃとてもじゃないけど着かないからね」
「そりゃそうっすけど!!」
未だ言い足りないのかい。母さんみたいだな。
「えーと少しいいかな子津君」
ふと気付いたら子津君の後ろにすっごくキラキラしてる人が立っていた。
あなたどっかの国の王子ですか?その右に流れている髪型と
2つに分かれている眉毛もすっごく疑問です。
「あっはい牛尾主将」
子津君はその人の後ろに下がった。そうか、キャプテンさんだったのか。
「えーと君が君かい?大丈夫だった?」
「はい。間違いなく私がです。まったく問題ありません」
「でもさっきのは危なすぎるよ」
まるで保父さんのように私を柔らかくたしなめる。
平気だとは思っても危険行為には変わりはない。
「それは、すみませんでした」
潔く軽く頭を下げて謝っておくことにした。
「分かってくれればそれでいい。それに原因の発端はウチの監督の所為だしね。
今他の部員達がリンチにしているから、其れで勘弁してくれないか?」
……追加。確かに良い先輩だけど何かこの人黒いです!!
先程から聞こえてくる打撃音はそれか?!
…まぁ制裁は加えてくれたしそれでいいか。
うん、そう言う事にしよう。
「あっはい。それで本人は……」
「ココだ」
……そこにはかなりボロボロになった羊のおじちゃんがいた。
「んで用件は?予想は付くけど」
どうでもいいやとその事はサラリとその事は流した。(酷)
「マネージャーやれや」
口調がめっちゃ命令口調だよ。強制だよ。
「マネぐらい他にもいるでしょ。それに文芸部入っちゃったし」
「お前にしてもらいたいのは普通のマネじゃねぇ。
簡単にいうと監督補佐みたいなもんだ」
「こんなしっかりしてそうなキャプテンがいるじゃない。必要ない必要ない」
「そんな事はないよ」
私の言葉を聴いてキャプテンは苦笑している。謙虚だ。
私は自信過剰な人よりこういう人の方が好感が持てるよ。
「牛尾は選手だ。その点お前だったら、データまとめも、
選手育成、その他もろもろ任せられるからな」
「私を過労死させるつもりか」
「それにを盗られるのはこっちとしてもかなり痛手だしな」
「へっ?」
いつの間にか部長が後ろにいて、他の文芸部の皆様が玄関に到着していた。
早いなおい。
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