#000 プロローグ
まだ桜も五分咲き位の今日この頃、
私、はここ県立十二支高校
に入学が決定し、説明会に赴いた。
門をくぐり、上を見上げると咲いているものと蕾のものとの割合が綺麗
だということに気付かされた。
趣があるその様子に笑みが零れる。
「『古の 奈良の都の八重桜 けふ九重に 匂ひぬるかな』だね。
これはまだ未熟だけど、とても綺麗だね〜」
満開の桜が好きだけど、蕾があるのもまた良し。
微かな軽やかな風と心地の良い桜の香りに自然と頬の筋肉は緩み、
目を細めたくなる。そこに。
キィィィン。
硬球がバットに気持ちよく当たった時の独特な音が響く。
せっかく風流を楽しんでたのに。気分壊されちゃったな。
こちらに向かって来てるよ。
私はちらりと音のする方向を一瞥し、すっと体勢を整えた。
「危険也!!」
グラウンドにいる人が危険を教える。でも、私には必要が無かったね。
パシッ。
ボールが素直に私の右手に収まる。
「大事はないか?!」
先程危険を知らせてくれてた人が近寄って来た。
部員の1人と思われる。しかし随分仏教くさい人だ。
数珠つけてるよ。ここにいるなら高校生だよね
…まったく見えないよ。
「平気です。コレお返ししますね」
私はボールをその人に投げる。
「うむ。かたじけない」
パシッ。
ボールはグローブにしっかり収まっている。
凄いな。目を閉じているように見えるけどしっかり取れてる。
「それでは失礼します」
そんなことよりも早く会場に行こうと思って
私はそそくさとその場を後にした。
「さっきの子、大丈夫だったのかい?」
「牛尾か。どうやら問題は無い様だった。それにあの者は野球経験者也。
それも、唯者では無い」
身体の姿勢、球の投げる動作、それらは一流と言って差し支えないものであった。
「へえ、蛇神君が言うんだったらよほどだね。楽しみだ」
その頃ベンチでは。
「……あいつ、か?こりゃ、丁度いい」
少し後、こんな会話がされていた事を知らなかったのは幸か不幸か分からない。
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