曇りがちな天気で日差しは弱く、少しばかり肌寒い。

さっき会った巨大幻獣の背中の上で昼寝をしていると、
聞き覚えのあるソプラノの声が下から上がってきた。


「ジンさーん!」

「お、じゃねーか。お前が俺のトコ来るのは珍しいな」


下を見てみると、予想通り、弟子のがいた。

でも俺の事を決して師匠とは呼ばない。

師匠はもう1人に定めたので俺は先生なんだそうだ。

が使役するトゥエルブモンスターの一人、額爾羅にかかれば
俺を見つけるなんて1時間も必要としないからここにいる
疑問は一切浮かばなかった。


「上がって来い。いい眺めだぜ」


は素直に頷いて足にオーラを集め、垂直に飛び上がった。

上がりきった場所に手の平にコブシ大サイズのオーラを飛ばし、
それを蹴って俺の隣に着地。

相変わらず念の使い方が上手いこって。


「風が気持ち良い場所ですね」


の長い髪は風で踊り、自分の存在をアピールしているようだ。


「今の季節はいいが冬になると山風が凄いぜ。

だからこの一帯の家屋は土台と屋根のしっかりしたもんが多い」


こういった地域文化が好きなは嬉しそうに俺の話を聞きやがる。

こうしてるだけなら出来の良い可愛い弟子なんだがな。

ま、反抗したり我侭言わねーのは自分の意思がないともとれる
から痛し痒しってやつだろう。


「んで、今日はどうしたんだ?
まさか世間話しに来たって訳じゃねーだろ?」

「ああ、そうそう。教えたい事があって来たんです。

今年のハンター試験、ゴン君が来ますよ」


おい、この馬鹿弟子は何て言った?


「うしっ!その呆気にとられた顔みたいが為にここまで来たんですよ。
目的達成ですね!!」


……お前腹芸上手くなったな。

会ったばっかの時は感情が全部顔に出てたのに…。


俺はガッツポーズをするを何も言わずに幻獣から突き落としたが、
それを見越してアニラにスペースホールを開かせていた。


「それじゃ私は観察方に呼ばれてますので行ってきます。

近況報告はしてあげますけど贔屓はしないのでそのつもりでー」


涼やかな金属音に導かれては消え、俺は深くため息を吐いた。

ったくおせっかいな馬鹿弟子だ。