体育着(黒蝶伝説 番外)
「もう何回目だよ…」「100は超えたぜ」
今日は1学年合同3時間ぶっとうしでスポーツテスト。
運動の得意な生徒にとって絶好の見せ場で張り切っている者
が多数いたが、今は20mシャトルランは最後の2人しか
挑戦者がいない。
一人は髪を縛った女子生徒。
一人はバンダナをつけた男子生徒。
どちらも同じクラス、同じ部活。
「149!ちゃん子津君に負けるなー!」
「150!子津!男の意地見せてやれー!!」
カウントするクラスメートが声援を送り、観客と化している
生徒達は彼と彼女、どちらが先にダウンするかドキドキ
しながら見守っている。
流れているテープから160と告げられた。
早さは普通の短距離とあまり変わらないようにみえる。
「と子津!次が詰まってるから終了しろ。記録は160」
「はい」
「はいっす」
疲れは見えるものの、体育系部活らしいはっきりとした
返事が出来る程度には余力がみられた。
先生の口元が引きつっているのように見えるのは
気のせいであって欲しい。
「ちゃん、子津さん疲れ様です」
クラスの集団に戻ると鳥居がタオルを持って待っていた。
「凪と子津君もお疲れ様。
子津君とシャトルランは記録いっしょだね」
「はいっす。最後までしたかったすけどしょうがないっす」
男子でも持久力とスピードが互角の人って魁兄やユタ以外
じゃ久々だな。
張り合いあってちょっと嬉しいや。
は汗で額に張り付く前髪をはらい、3人一緒に次の種目
の場所へと歩く。
「次の握力と長座測っで終りだっけ?」
「いえ、反復横跳びと垂直跳びもありますね」
「どっちとも大得意。さっさと終らせてこの体育着を脱ぎたいよ」
「汗べっとりっすね。制汗スプレー使うっすか?」
「子津君準備いい!有難く借りるね」
体育館に行き、3人は着々と残りのテストも消化していった。
結果
50m走 6,19秒(女子平均 8秒94)
幅跳び 2m90cm(男女学年トップ) (女子平均 1m65cm)
ハンドボール投げ 50m(女子学年トップ) (女子平均 14m)
20mシャトルラン 160回(途中終了・女子学年トップ) (女子平均 49回)
握力 右 65kg 左 68kg(女子学年トップ) (女子平均 25kg)
長座体前屈 59cm (女子平均 45cm)
反復横とび 69回(女子学年トップ)(女子平均 44回)
上体起し 38回 (女子平均 21回)
垂直跳び 102cm (男女学年トップ) (女子平均 47cm)
+*+*
「実は男じゃないのか?女の記録じゃねーぞこれ。
ありえねえ記録ばっかだ」
猿野はの記録用紙を見る。
だがコイツは握力計の針を振り切らせた。
[握力 学年トップ]
「ムカつくが、馬鹿猿に同意だ」
犬飼ものデーターを覗きこむ。
[ハンドボール投げ学年トップ]
「測定不可能を3つも出すあたりさんらしいですが」
「ちゃんの記録で勝ったの50m走しかないよー」[5,09秒で学年トップ]
「(反復横跳びは勝てた)」[75回で学年トップ]
「特にシャトルランな。160出す奴なんて始めて見た」
[上体起し40回で女子学年トップ]
「間違いなく総合では学年1位の記録…かも」
と、もみじと檜も加わる。
こいつ等は全員体育委員で用紙の整理を任され、
知り合いのデーターを物色していた。
「ま、の奇想天外な能力は今に始まった事じゃねーしな」
その場にいた野球部はその通りだと頷く他なかった。
その後の体育教官室。
「先生、2,3年の方でも測定不可能が続出しているそうです。
しかも全員野球部」
「野球部は普通じゃないから放って置きましょう」
体育教師主任、蟹沢先生は渋めのお茶を飲みながら
落ち着いて答えた。
20年前から十二支高校にいる彼にとって、
野球部の記録が可笑しいのは毎度のこと
になっている。
「しかし、マネージャーでもこの記録、勿体無いですねぇ」
「本当に」
体育教官でも驚く結果を残してスポーツテストは終了した。
※平均はすべて筆者の推測により決められました。