ヒートアップ



「10本目っと!」

バシンッ パンパカパーン

本日10回目のファンファーレを流し、は黒闇天を下ろした。
その動作と重なるように管理室から中年の男性が出てくる。

「嬢ちゃんやるねぇ。はい、賞品のスポーツショップクーポン券」
「1回千円分だから1万円。懐が暖かくなります」

新しい手袋とグリップテープ買おうかな。

パンパカパーン

ファンファーレが端っこのスピーカーから流れてきた。
どうやら私以外にもこのバッティングセンターにお客がいたらしい。
と言っても私ここに来たの初めてだけど。


「お、あっちもホームランかい。まったくこっちとしちゃ大損だ」
「じゃあ私はおじさんに悪いからそろそろ引き上げますか」


どうせ2週間もすればユタの壊したピッチングマシンも直るか
お義父さんが新しいのを買うだろう。

バットを仕舞い、これから駅前まで行って買い物でも楽しもうか
と考えていると、トントンと肩を2回叩かれた。


「あれ、凪?」
「奇遇ですねちゃん。ちゃんもバッティング練習ですか?」
「そうだよ。家のピッチングマシン、ユタが壊しちゃったの。
凪はどうしてここに?」
「私は兄の付き添いで、それに」

凪はバッティング場を指差し、はその指先を目で追った。

「剣菱さんいい加減凪さんとのデート認めて下さいよ!」
「あはは〜ビミョーにヤダ」



「ああ、女(妹)の争奪戦か」

おじさんがどうすればいいのか困っているじゃないか。
身内の恥だ。私がどうにかしなくちゃってことなんだろう。
くそぅ。何で貴重な休日まで部員の世話なんだ。
剣菱さんもデートくらい認めればいいのに。

「お猿君〜!剣菱さーん!」

おー2人とも私がいて驚いてる驚いてる。

「凪お財布の持ち合わせはある?これから4人でどっか食べに行こうよ」
「いいですね。この間から行きたいお店があったんですけど
そこに行ってもいいですか?」
「オッケー」

2人だけで勝手に行き先を決めている頃。


「てんごく君、これから俺とちゃん、凪と君の
ダブルデートで手打たない?」
「俺は全然問題ないッスよ!」

こちらも似たような展開になっていた。


+*+*+*


「剣菱さんはAランチとハンバーグセットですね。
ドリンク何にしますか?」
「ビミョーに暖かめのミルクティーでいいかな〜。
ちゃんどうする?」
「私はEセットです。凪がここのケーキが美味しいって
言うからブルーベリーケーキも頼もうかなって」
「んじゃそれ俺が奢るよ」
「いや、それは悪いので遠慮します」

「凪さんはどうしますか?」
「私はちゃんと同じEセットにしてみようと思ってるんです。
猿野さんは?」
「俺はイカ墨納豆フォアグラスパにしてみようと」
「そんなものはメニューにはない」

想像するだけでも不味そうな取り合わせにはすかさずに
合いの手代わりのツッコミをした。

「んじゃ俺は特大オムライスとステーキセット」
「リョーカイ。店員さんお願いしまーす」



「むっ!凪こっちのサラダ食べてみて」

はフォークにドレッシングのかかったレタスとキュウリを
取り、凪の口の中に入れた。

「酸っぱさが丁度いいドレッシングですね。
あ、こっちのスープもどうぞ」

凪がスプーンでスープを掬い、の口に運んだ。

「パンプキンスープ…でも隠し味が分からないな。
でも美味しいよ」
「来て正解でしたね」

「剣菱さん、女の園は見てて辛いっすね」
「二人とも俺達と話してるよりビミョーに盛り上がってるからね〜」

料理の話題となれば男の入る隙がない。
幸いなのは女の子の好きそうな店なので自分たち以外に
男の姿がないところだろうか。

「あ、猿野さん口元にゴハン粒が」
「え、どこっすか?」

との話の区切りで凪が猿野の口元に気づいて
クスッと笑った。

「ここですよ」

凪は猿野の口元に人差し指を運び、ゴハン粒を取った。

「あああありがとうございます凪さん!」


「微笑ましいほど奥手ですね」
「あはは〜俺ビミョーに寂しいや」

剣菱は唇の先をひくつかせているのを見て、
剣菱さんはシスコンだなと改めて実感していた
所でティーカップに手をかけようとしたが。

カチャンッ

「熱っ」
「大丈夫ですかちゃん!?」

カップを倒し、熱めの紅茶が手にかかった。

「ちょっと熱かっただけ。ヘイキ」
「ちょっと貸してね。あ、ビミョーに指先赤いね〜」

剣菱はひょいっとの手を持ち上げた。
ほんのり紅色に染まった指先。
いつもの指のない手袋に少しもかかっているが
そっちは平気のようだ。

「こんなの冷やしてくればすぐ引いちゃいますよ」
「それならこっちのが早いよ」
「ひゃっ!」

指先に、生ぬるい温度の剣菱の舌が触れた。


「剣菱さん何してんすかアンタ!!」
「ん〜消毒?」
「“消毒?”っじゃないでしょ!
ゆでダコになってますから!!」

猿野の言うとおりだ。
は反射的に羞恥心を感じて、
赤面してしまっている。

「つばってビミョーに滅菌とか洗浄の効果あるって
紅印から聞いたことあるんだ〜。
昔から怪我はつばつけとけば治るってあながち
嘘じゃないんだって」
「あんま今と関係ないですよそれ!?」
「別にいいじゃん。顔真っ赤にしてるちゃんも
カワイイし」
「それはそうだ…

って違うー!!!」

お猿君、本来ボケのアンタにツッコミ任せてゴメン。 でも今私はショック大きすぎてする気になれないから よろしく頼んだ。 ちなみにここの食事代はお詫びとして剣菱が全員分払ったとさ。 +*+*コメント+*+* 剣菱寄りではかけたけど…これでいいでしょうかチクチク様。 本当に書くの遅れてすみませんでした。