プレッシャーの向こう側




「一志この間の模擬テストどうだった?」

「偏差値はキープ。はどうだったんだよ」

「ん〜私は日本史だけ偏差値が5上がった」

「うわ、5上がるとかあり得ねえ。あ、元が低いからか」

「うっさいな。上がったんだからいいじゃん」


高校3年生らしい会話。

私と一志はよくある家が近所の幼馴染。

小中高同じでそのうち半分以上が同じクラスの根っからの腐れ縁。

だから一緒にいるとなんとなく安心する。

友達からは付き合っているのかといつも聞かれるが、公言できるような
明確な答えは持っていなかった。


「寒くなってきたね」

2学期も半分消費して、手袋が欲しくなってくるくらい
冷えた風が吹く季節になった。

「センター試験ももうちょっとだしな。は埼玉の女子大第一志望だったっけ?」

「うん。一志は国立だよね」


初めて、別々の進路を目指す。

不安だ。

親と教師からのプレッシャーも、友達の会話から聞こえてくる勉強の話も
ストレスとなって私を押し寄せる。

夏に戻りたいと最近よく思う。

野球部の応援に精を出したあの日々は暑い中でも爽快だった。

今感じてるストレスなんて全部忘れてた時間……。


「あ〜!もう止め止め!!一志、今からカラオケ行こ!!」

「はぁ!?何藪から棒に」

「ドリンク飲み放題のとこがいいから大通りのカラオケ屋かな。
時間は3時間で、アニソンと、宇多田と、ポルグラと…」

「おい俺の主張を聞け!!」

「だって忘れたいんだもん!!
高校通うの、もう実質4ヶ月ないんだよ!?
一志、野球以外は勉強勉強で私かまってくれるの
登下校だけなのに、もうそれもないんだよ!!」


一番の不安は受験の合否。

でも、次点は、一志を会う機会が減ること。


「やだよぉ……ずっと高校生がいいよぉ」


留年したいんじゃない。

今のままがいいんだ。

休憩時間に友達と話して、放課後は部活して、
帰りは一志と一緒にいて……。


「バーカ、んなことできっこねーだろ」


……一志はリアリストすぎ。
だから1年にコテンパンにやられたんだ。(禁句)


「俺は実家から大学通うつもりだし、だってそうだろ。
ちょっと位会う時間減るの我慢しろよ。
だからお前には俺がいないとダメだって気にさせんだ」


室外気温が低い所為か、私の頭に軽くチョップしてきた一志
の手は冷たかった。


「一緒にいてやるよ」


でも、言葉は温かかった。


「絶対だかんね」


ただの口約束だったけど、嬉しかったよ。


「でもやっぱカラオケ行こ」

「んな時間も金もねえ!!」





END



++コメント++
甘い……甘いか?
どうも管理人の中で一宮のツッコミ属性が消せ切れなくて
こんなんなっちゃいましたが、柚木様、こんなのでよろしければ
お持ち帰りください。

BY紙屋水樹