「冬っすね」

子津が外を眺めながらそう言った。

「雪だよ!」

兎丸は跳ねながら外に広がる銀世界に子供のごとく喜んでいる。
そして猿野が右手を大きく振り上げて宣言した。

「雪合戦だ!!」

「本日は雪の為グラウンド練習は不可能。
校内も運動部の坩堝となっているのでチームワーク強化と投球
練習を兼ねて雪合戦をします」

すでに3学期なので3年生は引退し受験シーズン真っ盛り。
牛尾先輩や鹿目先輩、一宮先輩などの高レベルの大学を狙う
人たちは勿論ここにはいない。
蛇神先輩はお寺の修行があるし、獅子川先輩は補習でいない
ので3年生は全滅。
故に雪合戦は1,2年のみの参加となる。

「これからやる雪合戦は題して『鬼狩雪合戦』
これから追いかけられる鬼とそれを狩る者の二手に分ける。
鬼がスタートして1分後に狩りが始まる。
制限時間の30分の間に鬼が全滅したら鬼の負け。
一人でも残れば鬼の勝ちだ。
ちなみに負けた方には楽しい罰ゲームを用意してあるから心
して遊べ」

羊谷の最後の一言に全員の目が真剣になる。
約1年の間でこの罰ゲームに何度も泣かされているのだから
当たり前だ。

そしてくじ引きにより以下の8名が鬼となる。

1年
犬飼・花崎・明神・
2年
猪里・新里・長戸・印西

「鬼はとにかく30分逃げろ。雪での反撃は許可するが殴る
蹴る突くなどの直接攻撃は厳禁だ。
分かったか」
「名指ししないで下さい」
「それと隠れるのもひとつの手として有りだが、同じ場所に
時間制限の3分の1、つまり10分以上いるとその場で狩られた
ことにする。
狩りをする奴は鬼に5回雪玉を当てろ。
ただし、連投は流石に不利だからカウント上は1とする。
何か質問はあるか?」

はすっと手を上げた。

「逃げる範囲はグラウンドのみですか?」
「原則として学校外に出ることと校内に入ることは禁止する。
後は校舎裏に回ろうが木に登ろうが好きにしろ。
ほかに質問がないならよーい、スタート

「「「「「「「早っ!!」」」」」」」

そうツッコミつつも鬼はちりぢりにグラウンドの四方に散った。 「鬼追っかけは1年は1年、2年は2年が担当しRO。 2年は俺が指揮すっから1年は辰羅川頼むZE」 「承りました」 1分でおおまかな担当を決め、羊谷のスタートの合図で 鬼を追いかけ始めた。 「僕等は犬飼君とちゃん追跡が担当だって。 頑張ろうね司馬君」 「(コク)」 「僕と猿野君は攻撃担当っすからまず足の遅い花崎君と 明神君を最優先するそうっす」 「犬飼とはメインディッシュってか。 石なんざ詰めなくても強力な一投お見舞してやるぜ!」 15分後 「2年は印西先輩残して全滅したぞー」 雪玉を制作していた片貝と袋田に星川がそう告げた。 「印西先輩が残ったのは意外だな」 片貝が素直な感想を述べると袋田がかじかんだ手を擦り ながら合いの手をうつ。 「猪里先輩が最初に集中攻撃喰らったからな。 こっちは予想通り犬飼とが残ったか」 その頃は……。 「えっと、裏門から倉庫に抜ける道には猗力君がいたっけ。 木に登ると降りる時にゲームオーバーになるから グラウンドに回るしかないのか」 そう独り言を呟きながら真後ろと右後方からの雪玉をさらり と避ける。 ここまでのカウントは0。 残った3人の中ではぶっちぎりの回避率を狩り側に 見せ付けている。 「だーっ!当んねー!! 誰だ相手に石なんざ詰めなくても強力な一投お 見舞してやるぜ!なんて言った奴! 当んなきゃ石詰めようが何しようが同じだぜ!!」 猿野がそういうと子津がまあまあと宥める。 「そんなこと言ってる間にさん見えなくなっちゃうっすよ。 ってかそれ言ったの猿野君本人じゃないっすか」 そう言いながら子津はもう一投げした。 それもはひょいっと避け、校舎の角を曲がる。 残り時間10分 「これで最後だ犬飼ー!!」 と、いう掛け声と共に本庄が雪玉を投げる。 ばすんっ 雪玉が犬飼の頭部に直撃した。 これで犬飼のカウントは5となりアウト。 「ぐっ、上からかよ」 犬飼は木の上にいた本庄を睨みつけて頭から雪を払った。 「何も隠れるのは鬼じゃなくてもいいんだよ。 これで残るは一人だぜ」 「とりあえず、印西先輩も残ってるだろ」 「あの人もさっきアウトくらった。 足の速さは部内でもトップだけど、あのボンバーヘッドは 目立つから狙いやすいしな。 そういう犬飼も黒くて目立つけど」 「ぶっころ」 残り5分 左右同時に来た雪玉をしゃがんで避け、その隙をついて 投げられたものは体を右にそらして後ろに流す。 雪で不安定な地面でダッシュをかけ、ネットを盾にして 次の玉も回避。 「桃坂先輩後何分!?」 タイマーを持っている桃坂に訪ねると即座に返答がくる。 「1分!30秒でカウント入るよー」 「了解」 そしてまたグラウンドと障害物の間を駆け回る。 「30秒前!」 もうグラウンドで追いかけっこをする他なく、 右手を雪に埋もれさせ、強く握った。 「だりゃっ」 「なんのっ!」 投げつけられた雪玉に雪玉を当てて粉砕。 「10秒前!」 カウントダウンがもどかしいほど遅い。 感覚と本来の時間の流れのギャップに舌打ちながら 飛ぶ熱い汗が雪をほんの少し溶かす。 「5,4,3,2」 最後に一矢報いようようと近距離から3つ同時に 雪が飛んできたが、 「もう当っても意味ないしね」 と言って右手で3つの雪を叩き落とした。 雪玉とタイムリミットのカウントが1になる。 「終〜了!!」 桃坂の知らせは狩る側の負けを決定させた。 「勝利!」 は雪玉のせいでついた雪を払ってから 高く上げたガッツポーズを見せ付けた。 「…で、罰ゲームは結局ぐちゃぐちゃになっちゃった グラウンド整備とボランティアの雪かきだったの」 は由太郎に髪を拭いてもらいながら今日のことを語った。 「十二支は面白いことしてんだなー。 俺達なんかずっっと体力づくりでバットも振れないで つまんなかったな。 こんくらい水気なくなればいいか?」 「ん、平気。じゃあ次はユタのマッサージだね」 こうして雪にまみれた1日は終った。 +*+*コメント+*+* 111111リクエスト。雪合戦十二支メンツ。勝者はヒロイン。 月様また遅くなって本当にすみませんでした(‐‐;)