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「本日の試合、我々の方が実験をかねさせて頂く故」

監督の告げた条件は半減野球。
華武の戦力を半分に減らし、それでも十二支相手に勝てる
という自信を見せ付けられて、十二支は心中穏やかでいら
れるわけがない。

「あ〜お待ちください。わかりました。
何か随分と気を使わせていただいちまって」

羊谷監督の承認にいくらかの反論も出たが、ベンチに深く
腰掛ける1軍をみてその声も収まった。

「さん今回5番センター?じゃ、守備には出られないね」
「うん、今年の十二支は昨年よりは強いのは確実だけどホント
の所、どれくらい力あるかわかんないから気抜いちゃだめだよ、
墨蓮君」
「はいはい」

墨蓮は分かったのかどうかわからない返事を返して2人は整列した。

1独民・2四方木・3野木久・4帥仙・5・6墨蓮・
7七綱・8彩目黒・9彼岸端

十二支はコミックスと同じですが華武は↑に代えたので
ご了承ください。

「どいつもこいつもパッとしねえな。おもっくそ2軍面しやがって。
しかも女出すなんてなめるにも程があるだろ」

別に言われなれてるけど、やっぱいい気分ではないな。
華武の2軍はの顔をみてそれを察知したのか猿野を
思いっきり睨んだ。

「オイそこの猿。テメーこそどの雑魚面下げて謳ってんだコラ」
「知らないのは無理ないけどさんが出る時点でありがたい
と思いなよ。
絶対あんたより数倍はさんの方が凄いから」

独民と墨蓮が反論を返す。

「猿野、今の発言はお主が悪い。殿に謝罪する也」
「公式試合なら話は別だけど、これは練習試合だ。
女性が出場して悪い訳がない」

蛇神と牛尾といった味方にまで叱責を受ける猿野。

「いいですよ。私がこの試合で自分の実力を見せればいい
だけの話です。
でも、そちらの2人の言葉は嬉しかったです。
ありがとうございます」

は柔らかく微笑んで蛇神と牛尾に礼を言った。
これだけで、と猿野どちらの精神レベルが高いのかは明白だ。

そして、展開は試合へと移行する。

「あれってカットファストボールですね」
「ああ、思ったよりマシな球投げられるので良かったな」

帥仙はベンチに腰掛けて興味なさそうにそう言った。
はそれに言葉でなく縦に首を振ることで返答した。

1.2回の表裏どちらとも0で押さえて3回に移る。

「帥仙先輩まで何引っかかってるんですか」
「うっせぇ。頼んだぜ」
「あいさ〜」

『5番センターさん』

キィィン
打ったと感じた瞬間には走り出す。

「まさか蛟竜が!レフト!!」

大きめにあがった打球は中々落ちてこないでセンター寄り
のレフトへと向かっていく。

「ファースト踏んだぞ!」

虎鉄がそう告げた瞬間、ガアァンとフェンスが大きく揺れて
球が落ちてきた。

「猪里君!」

牛尾はすぐさま球を拾って送球しようとするが。

「主将サードばい!」
「もう遅い!」

ズザザァ

は軽いフットスライディングでサードベースに触れた。

「セーフ!」

「ま、相手じゃしょうがないっしょ」

御柳はぷくーとガムを膨らませてそう呟く。
そして6番墨蓮が打席に入り、犬飼が投げると同時に走り出す。

「ホームスチール!?」

墨蓮はそれを見越したように地面をすべるようなバントをした。
カアァン

「サード!」

サードの方に流れたゴロを危なげに猿野は拾って辰羅川に送球した。

「おらあぁ!」

「どこに投げてるのですか!!」
「馬鹿だ…」

辰羅川の頭を過ぎ去る球を見ながらは普通にホームベース
を踏んだ。

1−0 華武優勢

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「ただいま生還してきました」
「よくやったぜ」
「初球から打つのは流石だな」

仲間たちにハイタッチしてはベンチに座った。

「あの手の球何回も打ってた時期があったんで」

威力は比べるまでもないけど。
墨蓮はファーストに居残ったが3アウトとられてチェンジ。

「おい馬鹿犬!何初っ端からでかいの打たれてんだよ!」

ベンチに戻る猿野は犬飼に文句つけるためにマウンドまで
登ってきた。
犬飼はまだ状況が信じられないような目をしている。

「うっせえバカ猿」
「アンビリーバブルです。まさか黒蝶の力がこれほどとは…」

「何だよその黒蝶ってのは!」
「私の中学時のあだ名だよ」

は華武のベンチから自分でそれに答えた。

「中学時代はソフトボールしててね、その時今よりずっと
長かった私の髪が黒い蝶の羽みたいに見えたんだって」

「その名前はソフトをしていた人間すべてに通じます。
貴女は全国2連覇を成しとげたどころか、世界試合の
優勝カップを持ち帰ってきた日本初の人ですからね」


「……、そんな事してたのか」

屑桐は驚きの目でを凝視した。流石に世界の舞台に
出ていたとは考えていなかったらしい。

「してたりしたんです。2年の冬にトラブル発生して辞めて
しまいましたけど、沢山のモノをもらいました」
「道理で強い訳気だよ(−0−:)」
「んだな」

「ソフトではホップしたりする球は日常茶飯事。それが鋭い
といっても私に打てない球じゃなかったってだけの話ね。
これでも、私が出るのが不満?」

鋭い目線が猿野を突き刺した。
まるで、猛獣と対峙しているのかのようにすら思えてくる威圧感。
それでも猿野は言葉を振り絞った。


「っけ上等だ!!」
「まだ元気みたいね。先輩達頑張って下さいねー」

はケロッと雰囲気を反転させて自軍の応援に戻った。
十二支は、1軍でなくても手ごわいことを肌で感じる結果となった。