5
学校から出て、私は全速力で疾走して師匠の家に来た。
「こんにちは。師匠いますか?」
診療所のドアを開けて中を覗くと電気がついていない。
どこかに出かけたのかと思うが、悩みを話せる人間がいな
かったのはちょっぴり残念だった。
「失礼しまーす」
靴を脱いでスリッパを履き、は奥へと入っていく。
しばらく歩くと診療所から師匠達が住む居住スペースに入った。
そして、一番大きな扉の前に立ってはそれを開けた。
ガララ
中は道場だった。
竹刀や、真剣・防具があるかと思えば道着や薙刀も置いてある。
シンと静まりかえった冷えた空気はの心を落ち着かせた。
一本の薙刀を手に取り、基本の型をこなしていく。
私の罪。
私はボールで人を傷つけた。
勿論ワザとではない。
しかし、彼女の大切なものを奪ったことには変わりなかった。
「許される訳がない」
アナタの所為よ!
彼女の母が言ったその言葉は正しい。
私がをソフトに誘い、そしてこの手で傷つけた。
私がいなければそんな事にはならなかったのだ。
ヒュッ
薙刀の切っ先が風を切る。
「なってないな」
「お帰りなさい師匠。お邪魔してます」
扉から叱咤する声が入ってきた。
「。私が言いたい事は何だと思う?」
「……過ちだと気づいたなら、修正するために全力を尽くせ」
「そうだ。お前の修正はしたい事を封じる事だと私に言ったな?
今でも本当にそう思ってるのか?」
は、肯定も否定も出来なかった。
「、やりたい事は何だ?
私に弟子入りしたのは何の為だ?」
師匠の問いかけは続く。
「強くありたいと願ったのは本当にお前なのか?
女であっても負けない術を教えて欲しいと言った
なのか?」
「そうです」
はっきりとは答えた。
それだけは間違いないから。
「なら、もう1度確かめろ。
自分の足下も自分の上にあるものも、横に存在するものも」
の目頭に透明の水が溜まる。
こぼれないように、ただ耐える。
「……私は、に会いたいです。
謝りたいです。
また、私の球を受けて欲しいです」
「家には私から言ってやろう。
行ってきなさい、」
「はい!!」
カランと薙刀を放り出して廊下を走っていった。
「まったく、世話の焼ける弟子だ」
行ってらっしゃい。
あの瞳を取り戻す為に。
怯えても、怖くても前を見るあの瞳を…。
続く。
※ここから先は本編“はじまり”と同じなので飛ばします。
6
の記憶の復活を知ったのはこれ以上なく喜ばしいのだが…。
「い、今更部活したいなんて言えない!」
真剣に悩み中。
兄弟の朝の鍛錬を再開したのが原因なのか家の出たのが
早すぎて学校には朝練参加者以外は誰もいなかった。
「そこを歩く女子生徒待つ故」
廊下をブラブラ歩いていたら不審者に呼び
止められた。
何で狐のお面!?
そしてその手に持つ軍配は一体何に使うんだ!?
しかし待て。校舎内にいると言うことは学校関係者には
間違いないだろう。
一応は話だけでも聞いておきべきか。
瞬時にそこまで考えて私は意を決してその狐面と向き合った。
「えっと、私に用ですか?」
「その通り故。我は野球部監督の菖蒲と申す。
プリントを運びたいのだが人手が足らぬ故暇なら手伝って
もえらえまいか?」
「その位はお安いご用です」
そして再び野球部グラウンド。
基礎練習に身の入っていない御柳を叱りつける屑桐の
図がそこには存在した。
「ミヤ昨日からずっとあの調子気だね」
「ちゃんに言われた事がショッキングだったんだべ」
「あれ?昨日さんがいたんですか?」
墨蓮が朱牡丹と久芒の話にクラスメイトの名前が出て
きて思わず聞いてしまった。
「来たけど…なんか辛そうな顔してすぐ帰っちゃった気」
「どうしてか墨蓮は知ってリング?」
「知りません。でも…中学時代ソフトボールしてた
見たいですよ。
元ソフト部の子がさん知ってて黒蝶だとか。
何で辞めたのかって質問攻めにしてましたから」
そう言えば、その時の辛そうな顔してた…。
「黒蝶?録調べられング?」
「後でやってみる気「止めて下さい」
朱牡丹の了解を話の中心となっている自身が止めた。
「あれ?さんおはよう。今日は早いね」
「オハヨ。野球部の狐のお面かぶった監督にプリント
持って行って配るように言われたんだけど、どうするべき?
ってかあれは本当にここの監督?」
は腕に抱えた白い紙の束を見せるように少し持ち上げた。
「うん。それは間違いなく菖蒲監督だよ」
墨連と朱牡丹に久芒が同様に頷いた。
「プリントは俺達が配る気(〉v〈)」
「あ゛、でも一応屑さんに知らせとくべ」
朱牡丹と久芒がの持ってきたプリントを受け
取って2人して等分にして持った。
「でも主将まだ御柳叱り中ですよ」
墨連がくいっと親指で2人の方を指さした。
「何かあったの?」
は墨連が影になってよく見えないので体を横向
けて覗いて見る。
そしたら御柳と視線がぶつかってしまった。
「」
「オハヨ御柳君、昨日はゴメンね。
なんか色々感情ごちゃ混ぜになっちゃって…」
御柳は走ってに近づいて……抱きしめた。
「何やってんだこのバカ!!」
「ミヤ今すぐにちゃんから離れる気(−0−#)/」
「名前通りのバカング!」
「婦人に対して何してるんだ!!」
4人同時にツッコミが入ったが、御柳のを抱き
しめる力は変わらなかった。
「マジゴメン。あんな顔させる位嫌なんて
分かってなくて…ホント後悔してる」
の肩に顔を埋めて御柳はそう言った。
「いやそんなこと謝らなくていいから。最初にこの
状況が危ないからまず離れよう!!」
は顔を真っ赤にして御柳を離そうと努力する。
「でもって柔らかいしイイ匂いで
気持ち「離れろって言ってるでしょ!!」
豪快かつ的確には御柳の鳩尾に拳を放り込んだ。
「もう、昨日の事に関しては御柳君まったく悪くない。
それに…もう野球部入ってもよくなっちゃったし…」
あ、でも魁兄とユタは嫌がるだろうな…。
「それは本当か!?」
「よっしゃ女子マネGET気!!」
「やったング!」
「これからよろしくねさん!」
え?あれ!?もう決定なの!?