if「もし黒蝶が華武校生だったら?」






1

4月、高校に入学してそろそろ部活を決めなくてはと思案中。

しかし、今はそんな事よりも目下のはりつき虫をなんとか
したいのが本音だった。

「墨君、御柳君なんとかして」
「御柳、さん毎度毎度困ってんだから止めてやれよ」
「ヤだね。折角の俺の癒しタイムを邪魔すんなよスミ」

図書室で借りた小説を読みふけりたいのに背中にくっつい
てる大柄の同級生はそれを許してはくれない。

「最後の忠告、実力行使するよ
「え゛っ!?ちょ、待った!」
「仏の顔は3度までだけど私は仏陀でもなければ死んでも
ないから2回まで。てことで逝ってらしゃい」

ドゴオォッ
御柳は三途の川を見たとその後語った。

さん部活は決まったの?」

墨蓮は倒れた御柳を気にすることなくと会話を楽
しんでいた。

「ん〜まだ。帰宅部が一番ありがたいけど、ここって全員
部活参加なのよね」
「だったらさ、野球部のマネージャーしない?」
駄目

はきっぱりと断った。

「ゴメンね、嫌いじゃないけど…野球に関わりたくないの」

そう墨蓮に謝るは、少し寂しそうに見えた。





2


放課後。

する事もないので図書室に寄ったら師匠の家にでも行こう
かと考えながら歩いているとふわっと1つの紙飛行機が飛
んできた。

どこから飛んできたのだろうと思いながら紙飛行機を拾う。

「丁寧に出来てるね」

オレンジ色の紙飛行機。
空へと向かって飛んでいたときはどれほどその色合いが映
えていたのだろう。

「すまない。それは俺のだ」

正面の廊下から3年と思われる男子学生がやってきた。
私から見て右の顔が火傷で覆われている人。
この人がこの紙飛行機を作ったのかと思うとなんだか可愛
いなと思った。

「すみません。綺麗に折れていたのでつい」

はその先輩に紙飛行機を返した。

「いや、拾ってくれてありがたい。
…図書室に行くのか?」

鞄を持っているのに本を出しているのが気にかかったのか
その先輩はそう私に聞いてきた。

「そうです。面白くてすぐに読み終わりました」

夏目漱石の“夢十夜”
作者の割には堅苦しくない話で気に入った。


「俺の友人にもその本が好きな奴がいる。
図書室にでかい図体したフェイスペインティングした奴が
いたらグラウンドへ戻るように屑桐が言っていたと言って
くれないか?」

「屑桐先輩って言うんですか。私は1年のです。
その大きな先輩はなんて言うんですか?」

「桜花だ」
「綺麗な名字ですね」
「あまり似合ってないがな」

屑桐先輩がここで初めて笑った。

「分かりました。桜花先輩がいたら伝えておきますね。
ではこれで失礼します」

「ああ。時間ととらせてすまなかった」
「いいえ。話が出来て楽しかったです」

そう言って私は図書室に向かった。
残念ながら桜花先輩と思われる人物は図書館にはいなかったが、
夏目漱石の“こころ”を借りようと貸し出しカードを取り出す
と桜花蛮奉という名前を見つけた。

「桜花先輩が夏目漱石好きなんだ」

屑桐先輩と桜花先輩はとても仲が良いらしい。
あまり知らない人でもどこか気持ちの良い気分になれる一時
だった。