黒蝶陰陽師











神降ろしから1ヶ月。

は肩にかけて歩けるくらいの荷物を持って
朱雀門の前まで来ていた。


「それでは宇治に戻ります」


儀式が終わって倒れたは体力も霊力もすべて底を
切らして3日間寝ていた。

そして今の今まで実家の村中邸で養生し、肉体、精神
どちらも回復して今日出立する。

今回出会った陰陽寮の人々が平安京の出入り口の朱雀門まで
見送りにきてくれていた。

しかし、彼らの顔は明るくは無い。


、もう1度考え直さないか?」

「くどいですよ屑桐さん。私は宮仕えはまっぴらです」


牛尾殿に女房として後宮に入らないかというお誘いも否と即答した。

理由は。


『あんな怨念渦巻く場所にいたいなんて思わないし、
生活が保障されてても窮屈なのも好きじゃないんです』


なんとも彼女らしい理由だと誘った牛尾は苦笑したらしい。

蛇神との契約に近い婚約はまだ続行みたいだ。

蛇神殿も素敵な殿方なんだから私になんか構ってないで
もっと素敵な奥さん探せばいいのに。

は自分が蛇神に惚れられてるのは知ってはいても
まだその感情を受け入れることはできそうにもなかった。


「だってさ〜ちゃん強いし、やっぱりこのまま
手放すにはビミョーに惜しいよね〜」


剣菱ももう一押しを加えての勧誘を手助けした。

それでもは首を縦に振ることはない。

「今、女である私が政治に深く関わるその場所にいる事は
人災を呼んでしまいますよ」


ぐっと彼らは押し黙るしかなかった。


実際、政治に関わる女性など天皇の母、国母くらいしか存在しない。


の言うことは紛れもない事実。



「でも、また会いに来ます」



青空の下で爽やかな笑顔を残して彼女は歩いていった。






イザナミは夫のイザナギをとても愛していた。


それ故、醜くなった自分を見られ、逃げられたのが苦しかった。


きっとそれは子の炎に焼かれて死んだ時よりも。
だから夫を憎み、夫の守るこの現世を憎んだ。




「イザナミ、見せてあげましょう。貴女と貴女の夫が生み出したこの世界を」



私が見たものをすべて伝えてあげましょう。


愛しさも憎しみも混ざり合わさるこの世界を。


「恋愛は、誰が私に教えてくれるのかしら」


蛇神殿か、もしかしたら今回会った彼らか、
それともまだ会わぬ誰かか。


それは誰にも知る事はない。









数ヵ月後

「あ、式だ」


空に舞う白い紙の式を見て、はそう呟いた。

彼らとの交わりはまだ続きそうである。






END




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前回のIF話:幼児化パラレルが好評だったのでパラレル復活です
日記でアンケートをとったら時代物が勝利しましたので平安パラレルになりました。
え〜と、まず専門用語の使いすぎごめんなさい。
分からないのは自分で調べるか私に聞いても結構です。

女性陰陽師がいたかどうかは史実上定かではありません。
そしてこの時代(菅原道真死後)では遣唐使は廃止されてるので
おそらくワンタンのようなチャイニーズはいなかったと思われるので
本当にパラレルです。
その辺にツッコミは勘弁して下さい。
中学生、高校生の方はこの話でテストで答え書いて不正解でも責任もちません。
あやふやな知識で書いてますからね。
言い訳という名のあとがきになりましたが、ひとまずこれで失礼します。

by紙屋水樹