IF 風邪をひきました。 カイト編 ピピと電子体温計が鳴り、わきの下から取り出して ベットの横に座るカイトに手渡した。 「8度2分。熱が高いな」 【喉の炎症・鼻炎・頭痛・発熱…疲労の蓄積による体力低下で 風邪ウイルスにやられたようだな】 サンテラが水枕を用意して、頭の下においてくれた。 氷がゴリゴリするが、冷えて癒える鈍痛と引き換えなら 耐えられないものじゃない。 カイトは私の額に手を当てて尋ねる。 「この間、クモの連中と派手にやりあったんだろ? その時能力を使いすぎたのかもな。 トゥエルブモンスター全員を前線で使うなんて無謀 なことすれば当たり前の状況だ。 あいつ等の能力自体は個々のものでも、エネルギーは のオーラを使ってるんだろ?」 そのことは彼らをフルに使ってやっと分かった事実で、 ある意味、人に知られてはならないことだ。 でも、カイトにも言えないようなことではないので 私は素直に頷いた。 「サンテラは治癒の能力を持つヘビだったな。 これは治せないのか?」 カイトの質問にサンテラは渋い顔をした。 【可能だ。しかし、主より緊急時以外の使用を禁じられている。 この能力は諸刃の剣。 多用すれば自己治癒能力の低下に繋がるとのことだ】 そういえば、この世界に来て最初に怪我して、治して もらった時に言ったな。 今でもどんな大怪我であれ完全治癒はさせないで、 動くのに支障がない程度にするよう心がけてもら っている。 【我々は病気にかかるという経験もなければ 看病の経験もない。 すまないが数日程ここに滞在してもらえぬか?】 「元からこんなのをほっとくつもりはない。 それでいいな、」 「うん…迷惑かけてごめん」 「馬鹿。素直に甘えておけ。 無理する必要はないが、少しくらいは何か食えるか?」 「今食べたら吐く。いらない」 「じゃあ寝ろ。 俺はここにいるから、安心できるだろ?」 額にあったカイトの手は頬に移動し、 指先が唇に触れた。 私は、その手に自分の手を重ねて瞳を、 体を休めた。 この手があれば、私は安心できる。 【寝入ってくれたか?】 「ああ。随分辛かったみたいだな」 【……仕事は完遂した。しかし、犠牲者が4名出た。 一人は幼子だった。一人は青年だった。 一人は老人だった。一人は昔の敵だった。 すべて、主の前で死んだ。 最善を尽くしても、犠牲は出る。 主は尊い犠牲という名を使い、死を正当化 する事を嫌っている。 ……悪循環よの。 狩人の世界は主が生きるには残虐すぎる】 「それでも止まりたくないし逃げたくもないんだよ、こいつは。 他人が動くのを待っていられないで、 自分で出来る事を見つけて、ヘタに成果を挙げていく。 の酷い所は待っていてくれないことだな。 なまじ力があるから足手まといになり得ないし、 意見を押し通せるだけの正論と権力を 突きつけられるから、待っている必要が無い」 【難儀な女に惚れたのう】 「まったくだ」 【それでも、その手を手放さぬのか?】 大きな手を握り返す小さな手。 愛おしい。 しかし、危険は大きすぎる手。 「こいつは、俺の女だ。 難儀だろうが扱いにくかろうが俺が 選んだ最高の女なんだよ」 俺以外がの隣に立つなんて冗談じゃない。 弱りきった顔を見るのも俺一人で十分だ。 「渡さないぜ。違う世界のこいつの家族にも友人にも、 勿論、あんた等にもな」 【やれやれ、主は難儀な男に惚れたものよ】 +*+コメント+*+ サイト2周年記念です。 今回は配布ではないのでご了承下さい。