中宮影州との顔合わせ。
真っ青な空。雲1つない、青一色のグラデーション。
今日はグラウンド整備の為、簡単な基礎練習で部活は終了。
午後には久しぶりの自由を満喫していた。
日曜のこんな晴れた日に出かけられる日はそうそう無いから、
駅前の繁華街まで、買い物に出かける事にした。
ざわざわと人が溢れる駅前の商店街。
その中を人に当たらないように気を付けて進む。
いくらか行くと目当てのお店を見つけて入り、狭い店内の商品を
ゆっくりと見て回る。
この店は和洋中を問わず、骨董と呼べる物を集めている店。
この雰囲気と掘り出し物に当たる確立の高さで良く利用している。
何個か面白そうな本を見つけてカウンターで金額分をお財布から
取り出す。買った本を鞄の中に入れてもう一度商品に目を落とす。
その中の1つ、可愛い円形のテーブルに置いてあるティーセットに
寄り添って置いてあるトランプセットが目に入った。
気になったはそのトランプを持ち上げる。
「絵柄はまあまあなんだけど、このトランプ、何か変」
お店の人に一言断りを入れてから中身を取り出して
カードを扇子のように広げて絵柄を見ると、右隅にある♥の
エースに違うものを感じ取った。奇妙な感覚に頭を捻っていると。
「良く気がつきました♥」
ぬっと顔の真横から急に誰かが声を掛けてきた。
「ふえ!?」
は小さな奇声を発してその人物から離れるように後ずさりする。
「ああ、ゴメンゴメン。このトランプに気付く人がいて嬉しくってさ」
後ろから声を掛けてきたのは、耳がエルフの様で、金髪に染め、
肩が大きく見える服を着ている男。年は私よりも2.3歳上くらい。
の中で誰かの面影と重なる。しかし、誰とだろうと考えると明確な
答えが脳内から返ってこない。
「あ、やっぱりそのトランプ普通と違うんですか?」
とりあえず、そのことは置いておいて、手に持っているトランプ
は何が変なのかを突き止めようと色々な角度で観察する。
「そうだよ。ちょっと見ててな」
そう言って、手をクルリの回すと、いつの間にか手の平にはウェットティッシュ。
この人、マジシャン?
「それでこの♥のエースに湿らせると」
ウェットティッシュをの持っていたカードの上に乗せ、すぐにはずす。
そこには、♥のエースとキングがあった。そう、いつの間にか2枚のカードになっていた。
「え!?どうして♥のキングが!?」
間違いなく私は♥のエースしか持っていなかったのに!?
「ニャハハ、ビックリした?これは元々カードに仕掛けがあったんだよ。
このカードは濡らすとカードが2枚に剥がれるんだ。昔、逃亡ルートの地図を
隠すために使ったトリックなんだよ」
影州は簡単にマジックのタネ明かしをに教える。
「へ〜凄いですね」
は物珍しくそのカードを触る。
そうか、奇妙に感じたのは厚さが他と違ったからなのか。
「んで、もう1つトリックがある」
「え?まだあるんですか?」
これだけが奇妙に感じた原因と決定付けたは
なだ手品が続くのかとその男の顔を見る。
「それはね、俺が君にへの恋の♥が増大したからカードの♥も増えたのさ。
俺の名前は中宮影州。君の名前を教えてくれるかい?」
影州はの手から2枚の♥のカードを取っての両手を握る。
「中宮影州って、7Bのピッチャーの?」
やっと誰と似ているかを突き止められて納得したと影州の手を
振り解いてから手をポンと打つ。
「あっ知ってるの?嬉しいな〜」
手を振り解かれたのは残念に感じているのだが、
が自分を知っていた事に喜んで本当に嬉しそうに笑う影州。
「んでもって紅印さんの双子の弟さんですよね」
その嬉しそうな笑顔がピシリと氷つく。
「え〜と、もしかして兄貴の事知ってる?」
数秒固まった後、影州は口の先を震わせながらに問う。
「はい。一応ライバル高なので。申し遅れましたが、
私は十二支高校で野球部マネージャー兼部員を
していますです」
は自分の名前を告げると、ケータイの時計を見て、そろそろ帰ろうと
影州から離れて店の出口に立ってからもう一度振り返る。
「面白い手品有難うございました影州さん。それでは今度」
それだけ残して、は店を出た。
残されたのは、最後にの笑顔で惚けてる影州が残されるのみ。
その日の夜。
「兄貴!!俺マジで好きな子が出来た!!」
寮の談話室で机をダンダン叩いて騒ぐ影州。
最初はの真面目そうな雰囲気に声をかけづらかったのだが、
トランプへの興味を示し、その反応が面白くて可愛いと思った。
それで最後に魅せてくれたあの笑顔。
♥を盗まれたのは俺の方になってしまった。
「もう、本気で綺麗で可愛かったんだって!!」
興奮して理性飛んでる影州を珍しそうに見る紅印。
「へぇ、あんたがそんなに本気になるなんて珍しいじゃない。誰々?」
「十二支のっていう子! 絶対あの子の♥を全部盗んでやる!!」
ピシリと固まったのは、同じく談話室でたむろっていた野球部員達。
「影州、にあったアルか!?」
「恋敵 増加」
「影州〜、ちゃんに惚れてるのは俺等も同じだから〜」
「影州!!あんたアタシのちゃんに何かして無いでしょうね!?」
次の瞬間には全員が影州を取り囲む。
「は!?何でお前等までちゃん知ってるんだよ!?」
まさかこれほど有名だとは思いもぜず、驚くしかない影州。
「ちゃんは俺の妹の友達だよ〜」
と剣菱が答える。
「そういやぁ、お前の妹十二支だって、言ってたしな」
剣菱の理由は納得。
「それには黒蝶アル。7B全員が知ってるネ!!」
とワンタンが新しい情報を影州の耳にいれた。
「黒蝶!?ちゃんが!!??」
あのビデオのスッゲーソフト選手!?
「そうよぉ。この前、剣ちゃんと勝負して1発でヒット出しちゃったんだから。
ちゃんの為ならアタシ、男に戻っても惜しく無いわ」
「黒蝶伝説 真実。我 愛慕」
仲間内すべてが敵。それでも……。
「……へッ!でも諦めねーからな!!ちゃんは絶対俺のもん!」
初めて、本気で自分の側にいてほしいと望んだ女。
どんなにレベルが高くて、倍率が高くても、諦めたくない。
あの綺麗な笑顔を盗んでしまいたいから。
++コメント++
アンケート1位獲得セブンブリッジ番外!!
『黒蝶伝説』影州初登場!!
難産だったですよ。ウチのヒロインと影州の共通点なんか見つからなくて
どこで合わせようかよ悩んだ末、アンティークショップでと。
影州はたまたま暑さしのぎに寄っただけのようです。
トランプのトリックは本当にあった話です。
面白いと思ったので使っちゃいました。
次はシリーズで他のやつ等と合わせてみようかなと考えてます。
だって、この影州夢はすぐ終わったのに華武夢は長くなったので
本数で増やそうかなと。
面白いと思ったら拍手で感想くれると嬉しいです。
BY水樹 志保