4 夕食を食べる為に食堂に入っておぼんを手に取ると、 私と同じ位の男の子が足元を見ずに裸足でサッカー ボールをコントロールしていた。 こんな所でも練習してるなんて偉い。 「ちっちゃいね。と同じくらい?」 へご飯を手渡すとは私と同じ方向を見て 練習熱心な少年の話をし出す。 「そうだね」 今の私が148cm。あの子がサッカーしてる子の平均 よりずっと下であるのは明白だろう。 「でもあれってかなり危ないんとちゃう? あ、真紀。渋沢先輩に三上先輩に藤代あと間宮がいるやん」 加奈子がバシバシ真紀の背中を叩いて指を指すので 私もつられて指の方向を見る。 「痛いから加奈子!いるのは分かったから叩くの止め!!」 「で、どれが真紀の彼氏なの?」 ピタッと2人の動きが止まり、2人はお互いの 顔を見合わせた。 「加奈子、に教えた?」 加奈子は知らんと手首のスナップ利かせて左右 に振って否定を表す。 「だって目が嬉しそうだったから」 違うの?とは首を傾けて聞き返した。 その拍子でちょっと大きめの眼鏡がズレて視界が狭く なったのでおぼんをに持ってもらって 眼鏡を直していると。 「危ない!」 の声がして上を向くとコップが降ってきた。 「わっ!!」パシッ バシャッ 避ける様に身を引いて右手でコップはキャッチするが、 数コンマ後、頭から冷たい水滴が滴ってきた。 「ちょっと平気!?」 琴美が私の顔を覗き込んで聞いてきた。 「水かかっただけ。咲が言った通りだね。 夕食より先にお風呂入ってたら二度手間だったよ」 おぼんをに持っててもらったのも不幸中の幸い? 「いや、これを予想して言ったことじゃないんだけど」 咲は拭くものを探して首を左右に動かすが、 それは一点に固定された。 「いい加減にしろよ!!てめーっ」 元気満点な怒鳴り声が食堂にいる全員の鼓膜を揺らした。 「私以外の被害者?」 しかもあっちは具入りか…不幸な少年だ。 今繰り広げられている情景だと練習熱心少年がおぼんを ひっくり返してしまい、怒られているよう。 「ヘタクソがこれ以上何したって上手くなるか! まざわりだ!場違いなんだよてめぇは!さっさと帰れ!!」 激情中の被害者の少年の台詞に違和感が胸の中に広がる。 「帰られちゃぁ困るねぇ」 座りきった眼と恐怖を与える目的の口調になったが 喧嘩中の2人の前に立っていた。 女子でありながら背も体格もそこら辺の男子中学生に 見劣りはしないので2人に恐怖感を与えるには充分 すぎる要素を持っている。 「何うちの相棒にコップ投げつけてんだよ」 ぞわっと背筋にくる低いテノール。 いつも聞いている声が寒気と畏怖を覚えるものへと変わってる。「冷水頭から被って風邪でも引いたら落とし前どうつける つもりだ?あぁ!?」
流石ヤクザ親分の娘であるだけあって、 脅しは充分なほど効いていた。 「あちゃーがキレちゃった」 恵子の場違いな落ち着いている声に思わず頷いてしまう。 止めなくちゃと思い立ち、私が駆け寄ろうとすると。「はい!そこまで!」ゴンッ
食堂のおばちゃんが小気味良い拳骨を元凶になった少年へ 落とした。も少年と一緒にあっけにとられている。 「謝ってる者をそれ以上けなすのはカッコ悪いよ。 あたしが思いっきり殴ってやったから勘弁してやんな。 そっちの嬢ちゃんも友達の為だろうが我慢をし」 はわだかまりはまだあるものの一応譲歩を選んだ。 「に謝んな」 それでおばちゃんはタオルを相手の少年に手渡して 場を解決させてしまった。 「おばちゃんカッコイイ〜」 由香の感嘆に心の底から賛同。 おばちゃんとても素敵だよ。 「あ、あの」 おばちゃんの素敵さの余韻に浸っていると練習少年 に声をかけられた。 「水かけちゃってごめんなさい。大丈夫でしたか?」 そう言って頭を下げられたので素直に応じておく。 「コップはキャッチできたし、ホント平気です。 こっちもが脅してごめんなさい。 は友達思いなんですけど怒ると怖いだけで、 許してあげてください」 「そんな!僕が悪かったんだし、本当にごめんなさい」 「いや、そこまで謝らなくていいですから…私は、 中1です。貴方は?」 「風祭将です。僕は2年です」 「風祭先輩ですか。練習するのは偉いですけど、程々に しないと怪我しちゃいますから気をつけて下さいね」 は髪から滴る水滴をタオルでふき取りながら風祭に 平気だとみせるように笑ってみせた。 「ありがとうさん」 風祭はの様子にほっとして同じように笑い返した。 「おーいチビコンビ、私らご飯早く食べたいんだけど〜。 こんな場所で癒し空間作らんでいい」 青筋浮かべてに顔を近づけてきた由香はからも 聞こえるくらいお腹の虫が騒いでいた。 「ごめんなさい、もう席確保したの?」 「そっちの男子が席空けてくれた」 由香は水野達の席を指差す。 そこでは真紀が彼氏と思われる人と楽しそうに話をしていた。 「やっぱり彼氏だったんじゃん」 「これは後で色々聞きださなくちゃだね〜」 と由香は互いの顔を見合わせてにんまり笑った。