周囲の視線が痛い。
この背中に粘りつくような人の関心は時を経ても慣れる事はない。
「ユタ、そろそろ逆立ち止めようよ」
「もうちょっとで50km行くんだからそれまでいいだろ?」
一般的には50kmは歩く距離ですらないけどね。
は仕方が無いと諦めの吐息と吐き、話題を変えた。
「そう言えばさー、六龍時代の友達の弟君にこの間偶然会ったんだ」
「その弟君は仲良かったのか?」
「その友達の家行った時に可愛がってた。
それで……」
他愛の無い話をしていると、ゴロゴロゴロと無骨なタイヤの回る音が辺りに響いてきた。
「恥ずい、本気で恥ずい……」
何が恥ずかしいって公道でリヤカーに乗って移動してることだよ。
何故真と高尾は平然としていられるんだ。
道行く人達が振り返って唖然とするのが申し訳ない。
「お前が足を挫いたのが悪い。
高尾スピード上げろ」
「ちゃんはいいとしてお前はこぐの代われよっ!!」
そう言いつつも立ちこぎしてスピードを上げる。
こっちはリヤカーに人を乗せて走ってるから道路交通法違反だ。
さっさと目的地についてしまうに越したことは無い。
ああ、早く原チャリ欲しい……。
※ 自転車、リヤカーなどの軽車両は基本的に荷台に人を乗せてはいけません。
高尾はフルスピードで車道を走り、由太郎とを追い抜いた。
すれ違う一瞬、村中兄妹と緑間兄妹の視線がかち合った。
「何だあれ?リヤカーで爆走なんて変な奴だな」
「何なのだあれは変わった人間だ……逆立ちで歩行するのを始めて見たぞ」
兄'sがそう言うと、妹’sがすかさずこう言った。
「「変わった人とか(真・ユタ)に言われたくない」」
ある日の、変わった昼下がりの出来事だった。