16.手紙を書こう。宛て先のない手紙を。(キノの旅 キノ)
『×××××ちゃん、口で話せないことがあるから、お手紙書くね。
そうすれば誰にもわからないから』
近所に住んでいたお姉さんの。
一緒に遊んでくれて、冷え性だといっていた冷たい手をずっと繋いでくれた。
そのは、大人になる前にどこかへと姿を消してしまった。
「キノ。その手紙どうしたの?」
キノが持っているのは宛名も切手もない、封筒。
先ほどこの国の郵便局の人が持ってきてくれた手紙。
「友達から貰ったのさエルメス」
僕がまだ×××××と呼ばれていた時の友達、 。
は僕よりも先に大人になるはずだった。
「どうしてその友達のものだって分かるのさ」
宛名のない、まだ封も開いていない手紙。
エルメスは怪しげにその手紙とにらめっこした。
「分かるさ。 は変わっていないから」
は誕生日の日から忽然と姿を消した。
大人達も探した。でも見つからなかった。
「 は、自分で自分の事を決められる人だから、
昔の約束も忘れない人なんだよ」
もまた、何らかの方法であの国を去ったのだろう。
「ほら、見てみなよエルメス。封筒に小さな絵が描いてあるだろう。
これが僕等の約束だったのさ」
が僕に手紙を書くときは封筒の隅に黒いヤギと白い星。
僕が書くときには白いヤギと黒い星。
それだけで不思議と彼女と僕の手紙はいつか届く。
「エルメス、次の国では便箋を買わなくちゃいけないね」
久しぶりに、返事を書かなくちゃ。宛先のない、いらない手紙を。
end