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ドリーム小説
22 兄妹の約束
極楽島を後にして、は1週間ぶりに我が家へと帰ってきたのだが…。
「……なんでまだ報道陣が残ってるのよ」
未だに家の前には数人の報道陣が居残っていた。
「仕方ない」
ため息を1つ吐いて、はお隣さんの裏口へと回る。
「おばさん」
は玄関から声をひそめて隣の家の住人を呼ぶ。
「あら、ちゃん帰ってきたのね。理由は分かるからどうぞ」
ガララと引き戸を開けると隣のおばさんはいつもの事らしく、
の姿を見るとすぐに許可をくれた。
「本当に御迷惑おかけします」
「いいのよぉ。おばちゃんちゃんの
羊羹大好きだからまた作ってね」
おばさんは頬に手を当てて反対の手は上下に振る。
本当に羊羹が楽しみらしい。
「それはもちろん喜んで」
はそれを快く引き受け、そして村中家と隣接している壁の前に来て。
トン フワァ スタン
と、壁を蹴って自宅の庭へと侵入に成功した。
そして目の前の窓を叩くと、するりと窓は開いた。
「魁兄ただいま」
窓を開けた部屋の主、魁に久しぶりの挨拶をする。
「、やっと帰ってきたか。靴を脱いで早く入れ」
魁もそれをみて安心したように頬の筋肉を緩める。
「うん。にしても、何であんなに長く報道陣が張り付いてるのよ。
あんな話題なんか1週間もすれば消えちゃうのに」
は靴を脱いで魁の部屋へと入る。
この方法なら正面裏口どちらからも死角なのでバレることはない。
「しばし待っていろ」
そう言って魁は部屋を出ていく。
は靴と鞄を自分の部屋に戻して魁の部屋へと舞い戻った。
「帰ってきたって!?」
しばらくすると、数日分の新聞を持った魁と
元気ハツラツの由太郎が来た。
「ただいま、ユタ」
ひらひら手を左右に振って同じく帰りの挨拶を由太郎にした。
「思ったより帰るの遅かったじゃん!もう明日だぞ試合」
由太郎はどさっとの前の座布団に座り込んだ。
「だから帰ってきたんだよ。そうじゃなかったら
報道陣が全員引くまで帰らないし」
「それでも心配はする。これが1週間分の新聞だ」
渡された新聞のタイトルは。
『高校野球女子参戦か!?高野連に議論飛び交う!!』
「…・・・!?これって……」
新聞のタイトルには目を見開いた。
載っているのは明嬢戦前と比べても勝ってしまう程の記事の数。
書かれているのは高校野球での女子の参加を認める上層部
が5分以上の争いになったという内容だった。
「どうやら明嬢は事前にある程度の実力を高野連に知らしめてから
あのようなリサイタルを開く許可を得ていたらしい。
それを越す女子の存在の出現、つまり、、お前のことだな。
それが全国の情報網で決定付けたからこそ本格的に
検討が行われているそうだ」
「だからそのきっかけになったのコメントを取ろうって
躍起になってるんだよ。野球全体の人気も落ちてるし、去年の甲子園は
暴力騒ぎがあったとか色々あって散々だったからここで明るい
話題持ち出してイメージ払拭したいんじゃないかって親父は言ってたぞ」
だったら十二支の猿野へのツッコミは暴力じゃないのか
という疑問はここでは放っておこう。
「へぇ、面白いじゃない。これなら女子野球部の甲子園も
考えられるし、どの道、社会人の部だって女子選手が
いるんだからもう言い逃れはできないよ」
はありとあらゆる新聞の特集に目を通していく。
「……できれば、黒撰との試合に間に合って欲しかったな」
パサリと新聞を畳に落とす。
「致し方ない事だ。それでも我等兄妹が
対立関係になる日が来ようとはな」
「だからこそ負けらんねぇだろ兄ちゃん」
「もちろんだ。油断も手加減もなしの真剣勝負だ」
魁は胡坐をかいて座り、由太郎との顔を見てから
真ん中に手を置く。
「約束破りは親父の拳骨」
由太郎も同じく胡坐をかいて座ると、右手で拳を
作って左手にパシッっと打ち付けて、魁の手に乗せる。
「勝っても負けても恨みっこなし」
は正座で右手を由太郎の上に乗せる。
「「「我等は明日は袂を分かち、敵となる」」」
私が、野球に関わった大きな流れがぶつかり合う。
不安もあるが、楽しみでもある。
その瞬間はもう目前だ。
あとがき