#62 開会式










そして、抽選会とはまた違う、大切な日。

「お前ら用意はいいだろうな!?」

「「「ウス!!!」」」




 7月某日。埼玉県予選がスタート。


十二支だけじゃない、全高校野球児の熱い夏は開幕した。













 私は今回はスタンド応援。


いつもの黒の野球帽子を被って凪達マネージャーと一緒に座っている。


ついでにウナちゃんもしっかり司馬君から預かっていたりします。




「来た―――!!十二支だ―――!!」「いけ〜〜〜!十二支!!」

 賊軍が声を張り上げる。それ以外の声援は。


「牛尾様、こちらをお向きになって!」「おほほほ。キャプテンスマイルですわよ」

『牛尾様をお慕いする集い』のお嬢様方。


「犬飼キュ〜〜〜ン!!」「キャ〜〜!!こっち見て見て見て〜〜!!」

『犬飼キュンを地球の裏まで追いかけ隊』の女の子達。

さっきから睨まれて視線が痛かったりします。他には。


「比乃く〜〜ん!かわい〜〜〜!!」

大喜びで手を振るウサギ君。


「私の為に勝ってね!虎鉄くんvV」

笑顔で投げキッスを送り返す虎鉄先輩。


「司馬キュン笑って〜〜vV」

2人とは反対に真っ赤になって、うつむかない様に必死になっている司馬君。


「鹿目様!私を罵って〜〜〜vvV」

うんざりした様子の鹿目先輩。


……『罵って〜〜vV』?Mなのか?まっ。その人の趣味に口出しはしないさ。


「猿野くぅ〜ん」

お猿君を呼ぶ声が観客席から聞こえた。…言っちゃ悪いけど、意外だ!!

それを聞いた猿野は、パッと観客席の方を見た。


「猿野キュ〜ン、私の脱ぎたて勝負パンツあげちゃうわ〜〜」

 女とも思えないそれどころかレスリングの上にいても違和感のない

太目の女子がパンツをブンブンと振り回してフェンスをよじ登っていた。


あっちゃ〜〜…お猿君も可哀想だなぁ〜。さぞ落胆しているだろう…。

猿野の顔をチラッと見ると。

当の猿野は、目をハートにしてその女子に手を振っていた。



「………人の趣味に口出ししちゃだめだよね…」

ちゃんどうしましたか?」

「ううん。何でもないよ凪」


右手を左右に振って否定する。

凪はあれが平気なのか…?凄いな。ウナちゃんも怯えてるのに……。







「き…来たぞ!」「今年も王者の野球、見せてくれ!!」「今年も華武の時代だ〜!!!」

王者華武も登場。やっぱりフェイスペインティングが目立つ。


「昨年の準優勝校のセブンブリッジだ〜〜〜!!」

「いや〜、セブンブリッジが急成長を遂げて、今年はがぜん盛り上がるな!」

「ああ…それまでは華武の独壇場だったからな!」


次いで、セブンブリッジ。私的には土本さんが目立ちまくりだと思う。

さすがに、この2校に集まる視線はケタ違いだよね。


「剣菱さんもこういう時は顔、眠そうにしてないんだね」


凪がクスクスと笑いながら同意する。


「ええ、いつもはご飯食べてる時に寝ちゃう時がありますけど…」

「ああ。始めて会った時、話をしてたら急に寝ちゃって吃驚した」


黒選も入場も滞りなく終了。


…ちょっと小饂飩さんと緋慈華汰さんが騒がしくて魁兄が怒ってたけど…。


埼玉県内の、実に165校が整列が終了。





後は開会の言葉と選手宣誓だけのはずだったのだが。








「え――――…ゴホン。これより開会式を始めたいのですが、

まだ一校入場していない高校があります。直ちにグラウンドまでお願いします」


 …どこ?


「何だそりゃ。早くも棄権かよ」「緒戦で華武と当たる所だったりしてな」




「……ホントだ。いないよ」


彼の高校が見当たらない。





 バラバラバラバラバラバラバラ




「何だ!やかましいな!」「見ろ!空だ!!」「ヘリコプターが!!?」



 迷彩柄のヘリが開会式の上空に出現!!


これにはスタンドにいる人達も唖然としている。


 ババババババ


「総員!降下!!」


 って、何か落ちてきましたよ?なぜにパラシュート?


ヘリ同様、迷彩服を着たムサ苦しい野郎共が、次々グラウンドに降り立つ。




武軍装戦高校。


野球とは違った意味で侮れない相手校だ。


「な…何だよ!パラシュートで降りてきやがった!!」「こりゃ、開会式のセレモニーか!?」



 迷彩野郎の一人が笛を吹く。


「全員集合!!」


「武軍装戦高校、只今到着いたしました!」


 敬礼した。


「うわ〜、見て見て!パラシュートでやって来るなんて、本物の軍隊みたいだ!!カッコイイ〜!!」


 十二支ではウサギ君が思わぬセレモニーにはしゃいでいる。

袖を引っ張られている司馬君はちょっと困っている、いや、怖がっているのか?


そしてどうでもいいことではあるのだが…





「開会式に遅刻しちゃいけないだろ」


その時点で失格者だ。









「それでは、開会の言葉を、埼玉県高校野球連盟会長から、どうぞ」


「え〜、ごほん。本日はお日柄も良く、絶好の野球日和です。

それでは皆さん張り切って死んでください」


 お猿君!!何でそこにいんの??!!


「宣誓!僕達選手一同は、スペースシップに乗って、

まだ見ぬ宇宙の果てまで冒険する事を誓います!!」


 スペースシップ!?宇宙旅行か?!


「変質者をつまみ出せ〜〜!!」


 おじさん達に引きずられていく猿野。


「あれ、後で引き取りに行くの、また私なのかなー」


そう考えただけでゲンナリしてくる。


監督にやらせろ」


柿枝先輩が私の肩にポンと手を置く。


「…そうします」


私はその言葉に従うことにした。


、ドンドン野球部の保護者になってるかも…」

「檜、それは勘弁して…」


それは監督の役目であって、決して私ではない。











「選手代表、華武高校3年主将・屑桐無涯君」



 屑桐が、マイクの前まで進み出る。


その姿は威風堂々として、埼玉野球の頂点に立つに相応しい。






「宣誓!!」


左手を掲げた。


「我々選手一同は!スポーツマンシップに則り!!

正々堂々と戦い抜く事を誓います!!!」



屑桐の宣誓が高らかに、会場へ響き渡っていく。


それは、これからの戦いの合図に相応しいものだった。






……夏が、始まった。もう引き返せない。一度たりとも、敗北は許されない。

























あとがき