ドリーム小説


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「渡せた?」
「おう」

が御柳を発見して数十分後、御柳の持っていたノート
の中身を知った2人は犬飼と辰羅川にそれを託した。

少―し乱暴な譲渡だけど、確実に心の距離は
狭くなった気がした。

「でもこれで名前の由来は見当がついたね。
蛟竜はカットして沈むみたいに見えるから潜水艦、
飛竜はまっすぐ飛んでくる戦闘機、
天竜は巨体に似合わず高速で進む巡洋艦、
白竜は画竜点睛の故事からとられている」

そういえば、幸一さんの蔵書の中に世界戦闘機大百科
って本があって読んだ。

大神さんも師匠の家に遊びに来ていたから、
その本から名前を選んだのかもしれない。

「は?何で戦争兵器の次にそんな熟語がくるんだよ?」

「画竜点睛は中国の昔話みたいなものよ。
ある一人の画家が寺の壁画に白竜を描いていました。
その絵はとても素晴らしく、描かれた竜はまるで
生きているよう。
そして、画家は最後の仕上げに瞳を描き入れました。
すると、壁画から竜が飛び出し、
天高く昇っていったそうな。
それを見た人々は誰一人欠けることなく、
仰天し、その様子から目を点にして驚くこと
を画竜点睛と言う様になった」

は歌うように言葉を流した。

「蛟竜、飛竜、天竜は正に兵器の如く相手を打ち落とす。

そして、白竜は全てを驚かせずにはいられない球の
完成段階一歩手前を指す。その球の名は」


臥竜点睛


「それが、大神さんの目指した、極致の球」

だから私は、それらを受け継ぎなしない。
私は大神さんの好敵手であって弟子ではないのだから。

「そんなに深く名前考える人だったか、あの人?」

ミヤ君の素朴な疑問は彼の人柄を知っていれば当然だ。

深く考えるよりも即実行。

野球部の運営もしていたのは副キャプテンだった
雪さんに違いない。

しかし、私はこの質問への答えを持っている。

「ほら、形から入りたがる人だったから」
「あ〜納得」

御柳はうんうん頷き、もだよねと同じく頷いた。




「あーもう6時だ。さっさと戻らなくちゃ怒られる」

ケータイのサブディスプレイの時計は真実の時刻を
映し出している。

「女子選抜の2回戦は明日だったか?」

ポケットに残っていた最後の2つのガムを出して、
1つを自分の口に、もう1つをに渡した。

「そう。今度は山形と。埼玉みたいに目立つ選手は
いないけど、下地が強固な選手が多いらしいよ」

はそれをありがとうと言って受け取り、
同じように口に放り込む。

味はグレープで、葡萄の甘酸っぱさが口に広がった。

それ故に根強い強さに定評があるので中堅より少し
上のランクといったところか。

「決勝まで残れよ。先に大阪ぶっ飛ばされるのは癪だけどな」
「敵討ちはしないわよ。ただ私達は誰にでも油断も容赦も
しないだけなんだから」

ガムを自分の顔の半分ほどまで膨らませ、パンッと
音をさせて割る。

その音は心の切り替えを呼びかけるような、大きな音だった。





あとがき